ペトロビッチ監督は攻撃サッカーで知られている。自陣奥からつなぐ鮮やかなパス回しに、複雑に形を変えるシステム―。監督自身は就任会見で「どの監督も魅了する攻撃的なサッカーをしたい、と言うはず。でも私はそれを実際に実践したい」と自信を見せていた。だが、堅守からロングボールを多用したカウンターが武器だった札幌の選手たちがなじむには時間がかかると予想された。開幕前の下馬評も昨年までと変わらずに低かった。
2月下旬にシーズンが開幕するとリーグ戦3試合で2敗1分け、と当初は苦しんだ。しかし、第4節の長崎戦で勝利するとチームは勢いに乗り始める。都倉賢は「初めてトライすることなので、キャンプのときは肉体、体力的にきつかった。いっぱいいっぱいだったが、疲れも取れて、確実に戦術も浸透した。それが長崎戦で結果に出て、自信が現れて、いい循環サイクルに入った」と手応えを感じていた。
長身の都倉かジェイを1トップに置き、2列目には果敢にドリブルを仕掛けていくタイ出身のチャナティップと東京五輪世代の三好康児を配置。さらにウイングバックは浦和から移籍し、監督の戦術に精通する駒井善成、若い菅大輝が高い位置を取り、攻撃時には5人が一斉に敵陣に襲いかかる。練習ではパス回しで出し手にパスを戻すことを禁止するなど攻撃への意識を徹底、無得点だった昨シーズンから8得点と躍進したチャナティップは「(監督からは)練習でゴールが視野に入ったらシュートしろ、と言われる。いつも文句を言われるので怖い」とおどけてみせた。
その一方で指揮官は「ある程度の枠の中で、自由でいいし、自分で判断していい。選手はロボットではない。自分で考えるのをやめてはいけない」と戦術に固執しない柔軟さも見せた。相手が前線からのプレスでパス回しを封じにかかれば、四方田監督時代に得意としていたロングボールによる速攻も使うなど、多彩に攻撃を組み立てた。
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