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「更生の現場」を訪ねる 少年法の適用年齢は(上)

「受け子」で少年院へ

 少年法の適用年齢を「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げるか否かの議論が続いている。2022年4月には成人年齢が18歳に改められ、少年法で守られる年齢も合わせるべきだとの声がある一方、更生より刑罰を重視することで、「再犯リスクが高まる」との懸念も根強い。非行少年の更生に携わる人たちはどう受け止めているのか。現場を取材した。(社会部・山中貴裕)

 法に触れる行為をして補導されたり、逮捕されたりした少年は、家庭裁判所で少年院送致の保護処分が決まると、少年院で矯正教育を受ける。

 少年院は、犯罪傾向の進行度などによって第1~4種に分類されており、非行少年の収容先は年齢や再犯の可能性などを考慮して決められる。

 東京都八王子市にある第1種の多摩少年院を訪ねた。心身に著しい障害がなく、犯罪傾向が進んでいない17歳4カ月以上の男子約170人が矯正教育を受ける。1923年に日本で初めて開設された少年院で、築約50年の校舎など、古い建物が目立つ。

 神奈川県出身の少年(18=取材当時、以下同)は、特殊詐欺やバイクの窃盗などの非行事実で収容された。高校中退後、東北地方で土木作業員として働いていたが、帰省時に地元の仲間が賭けボウリングなどで楽しそうに遊ぶのを見て、仕事を辞めた。運転免許を取得するための金欲しさから、「稼げる」とのネットの書き込みに飛び付いた。

 高齢女性から現金の入ったバッグを駅で受け取る「受け子」の仕事で、報酬は11万円。翌日も指示役から電話を受け、別の高齢女性宅に荷物を受け取りに行った。不審に思った住民の通報で警察官に現行犯逮捕されたという。

 「抵抗はあったけど、お金欲しさでやってしまった。仕事を続けていれば結果は違ったと思う」。落ち着いた様子で当時を振り返った少年。非を認めることができず、いらいらを抑えるのが難しい性格だったが、少年院での生活を通じ改善されたと感じている。

 小型クレーン操作のための免許やガス溶接などの資格を取得しており、再び作業員の仕事に就いて将来は独立したい、と語ってくれた。

 どんな時間が楽しいかを尋ねると、一日の日課がすべて終わって夜、布団に体を横たえる時という答えが返ってきた。「きょうも一日頑張ったなと思う瞬間です」

【少年院】非行少年らに矯正教育を行う法務省の施設で、全国に51カ所設置されている。収容対象はおおむね12歳以上26歳未満。入院中に20歳を超えると収容継続の手続きが取られる。2017年は新たに2147人が収容され、半数は18~19歳だった。殺人などの重大事件で家裁から検察官送致(逆送)され、刑事裁判で懲役・禁錮刑を受けた少年が収容されるのは少年刑務所で、少年院とは異なる施設。

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