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「更生の現場」を訪ねる 少年法の適用年齢は(下)

内省深め、原因探る

 少年院で行われている矯正教育や、収容された少年らの生活ぶりのリポートに続き、家庭裁判所の審判前に入所するケースがある少年鑑別所の現場を取材した。

 逮捕された少年に逃走や証拠隠滅の恐れが認められるなどした場合、家庭裁判所は少年鑑別所への収容を決定する。

 少年鑑別所では、心理学や教育学などの専門家が、少年の更生可能性などを調査。結果は「鑑別結果通知書」にまとめられ、家裁がその後の少年審判で処分を決める際の参考にされる。

 家裁の調査官も審判までの間に非行原因を調べるが、主に家庭や学校など、少年を取り巻く環境が対象で、内面の分析に重きを置く少年鑑別所の調査とはアプローチが異なる。ただ、審判に必要な情報を集めるという目的は同じで、両者は頻繁に情報共有し、連携を取り合っている。

 東京の西側、多摩地区に住む少年らを収容する八王子少年鑑別所(東京都八王子市)を訪ねた。JR八王子駅からバスで約20分の住宅街にある2階建ての白い建物で、高い塀に囲まれた少年院と違って物々しさは感じられない。定員は80人で、常時20人前後が収容されているという。

 同所では、入所少年に対し、まず、「わたしの歴史」と題した作文を課す。家族構成やこれまでの成育環境などを把握するためで、その後、心理検査や知能テストを行い、価値観や性格、知的能力などの客観データを収集。医師が持病や障害の有無などを確認する。

 収容期間はおおむね4週間。最も重要なのは、心理学の専門職である鑑別技官による面接だ。1回当たり1時間かけ、じっくり話を聞く。

 大学院で心理学を専攻した朝比奈卓首席専門官(当時)によると、少年は、自分でも本当の非行原因に気付いていなかったり、語彙(ごい)不足で、うまく表現できなかったりする。大人への不信感が強い少年も多く、面と向かって問い詰めても心を開かない。朝比奈氏は「少年とともにこれまでの生活を振り返り、非行に至った経緯を一緒に眺めるようにして言葉にする作業」と説明した。

 時には、作文や絵画などの特別課題を出し、入所当初に実施したものよりも詳細な心理検査を行うこともある。入所後のささいな変化も重要な情報になるといい、あらゆる手法で内面を探る。

 同じ窃盗事件でも、そこに至る原因はさまざまだ。親の愛情を確認するためだったり、大人への当て付けだったり。紀恵理子所長(同)は「抱えた困難さを解決する手段として少年は非行に走る。大人が気付かなくても、必ず予兆はある」と指摘する。

 特に気に掛けることは何か。「まず居場所と安心感を与えることが重要。それが欠けたままでは、少年は落ち着いて自分を見詰め直すことはできない」と語った。

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