在日米軍再編で有事の司令部機能強化をうたい米陸軍のキャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)に鳴り物入りで発足した米第1軍団前方司令部。発足から11年となるが、在日米軍の組織が複雑なことに加えて大半が指揮所要員で、その実態はフェンスの外からはうかがえない。前方司令部のダレル・グリーン司令官(48)=陸軍大佐=が日本メディアのインタビューに初めて応じた。イラクやアフガニスタンの戦場を経験し、日本赴任前には北朝鮮情勢が緊張する中で在韓米陸軍訓練課長を務め、オペレーションに精通している。
グリーン氏は前方司令部が日本に存在している理由を「陸上自衛隊と連携し、大災害を含む有事に米本土から派遣される地上部隊を円滑に受け入れる体制を構築するためだ」と明言。有事の際に日本に設ける前線指揮所を通して陸海空・海兵隊の統合任務部隊の指揮官を支援し、日本側との調整を円滑にすると述べ、「これらが全てディフェンス・オブ・ジャパン(日本防衛)につながる」と強調した。【時事通信社編集委員・時事総合研究所 不動尚史】
日本から約7700キロ離れた米西部ワシントン州のルイス・マコード統合基地を母体にする第1軍団前方司令部。2007年にキャンプ座間に設置されたが、平時は表舞台に出ることはほとんどない。司令部はキャンプ座間内にある日米の調整を担う陸自の日米共同部(相模原市)が入る建物にある。1階正面玄関には漢字で「米第一軍団(前方)」と書かれ、「I Corps(FWD)」と英語で記された金属版が掲げられている。ちなみに、この建物には在沖海兵隊の連絡室も入っており、「USMC Liaison」とも記されている。
インタビューが行われたグリーン氏の執務室と自衛隊側のオフィスは廊下をはさんで向き合う形にあり、廊下を迷彩服姿の米兵と自衛官がせわしげに行き交う。「お互い忙しいがよく会って話しをしている」「日々の調整業務を通して陸自と関係を築くことが大切」と、対面での意思疎通の重要性を強調した。カウンターパートは日米共同部長の野村悟陸将補以下、約20人の自衛官。一方、第1軍団前方司令部の体制は要員132人で、全国レベルで日米が円滑に連携できるよう、北海道から九州・沖縄までを五つの区域に分けて設置されている陸自方面隊にも兵士を派遣し常駐させているという。方面総監部がある札幌や仙台、兵庫県伊丹市などの都市にも前方司令部の兵士が連絡官として駐留していることになる。
新着
会員限定