日本のコメを代表する品種「コシヒカリ」。その発祥の地が福井県と言ったら、意外でしょうか。戦中に新潟県で開発が始まり、戦後、福井県に移されたという経緯はありますが、開発に成功したのは福井県。しかし、当時の福井での栽培には合わず、コシヒカリは新潟県でスターへの道を歩んでいきます。
そんな福井県が新たな挑戦です。2011年から「コシヒカリを超える新しい品種を開発する」というプロジェクトを開始。6年をかけて新品種「いちほまれ」の開発に成功し、今秋、全国販売にこぎ着けました。以下はジャーナリスト、古谷千絵氏によるリポートです。
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福井市にある福井県農業試験場。60年以上前、コシヒカリはこの農業試験場で生まれた。2011年、その試験場に「ポストコシヒカリ開発部」が新設された。「コシヒカリを超える新しい品種を開発する」というミッションを与えられ、従来の人員を倍増する異例の8人体制でスタートした。
県は新品種の開発に先立ち、東京都と福井県で一般消費者やプロの料理人ら約1500人を対象に食味調査を実施。若い世代の人たちを中心に、一粒一粒がしっかりと感じられるような、いわゆる「粒感」のあるコメが人気だということが分かった。
情報収集の成果もあり、いちほまれは見た目が白く、つやがあり、粒感の際立った品種になっているという。味以外の特徴は、暑さに強く、いもち病にも強いことに加えて、コシヒカリに比べて草丈が15センチほど短い。それにより、倒伏しにくくなり、生産しやすい。
また稲の穂が出る時期も重要だ。出穂時期は収穫の時期と連動する。いちほまれの収穫時期は9月14日ごろ。コシヒカリの収穫期は9月6日ごろ。コシヒカリの収穫後、そして晩生の「あきさかり」の前に収穫することができる。
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