会員限定記事会員限定記事

【農林水産・最前線】昆虫を育てて食べるという選択肢~米欧でビジネスとして広がる~

コオロギをスナックやクッキーに

 米欧を中心に、食用や動物用飼料としてコオロギなどの昆虫を育てる「昆虫養殖」がじわりと広がっている。世界人口の増加に伴い、肉や魚といった動物性たんぱく質が足りなくなると予想される中、新たな供給源として昆虫への期待が高まっているためだ。昆虫を食べることへの抵抗感など、課題を克服できれば、消費は急拡大する可能性がある。

(シカゴ支局・デハーン英利子)

  ◇  ◇

 米北西部モンタナ州のボーズマン・イエローストン国際空港から車で8分ほどのところにある「カウボーイ・クリケット・ファームズ」は、人間の食用にコオロギを養殖している。

 養殖場の内部は、コオロギの生育に適するように、常に32~35度に保たれ、湿度は30~40%に設定されている。1日で最大10万匹がふ化し、プラスチック容器の中で、マメ科の多年草アルファルファや大麦など70種類の材料で作られた餌や、野菜から作られたセルローススポンジに染み込ませた水を与えられて育てられる。

 同社のジェームズ・ロラン氏は、成虫は平均で0.35~0.45グラムと、業界平均の0.25グラムを大きく上回るまで成長すると強調し、「わが社のコオロギは良質な餌と水で育てられ、栄養価も高い」と誇らしげに語る。飼育過程で排せつされる大量のふんは、米国内外の農家や医療用大麻の生産業者に販売され、肥料として活用される。

 ここではコオロギはふ化から約6週間で成虫になる。それを生きたまま冷凍庫に入れ、いったん冬眠状態にする。その後、20~30分をかけて冷凍庫内の温度を徐々に下げて死なせる。脱水機に入れ、6時間半かけてゆっくりと水分を抜いた後、味付けしたスナックや、パウダーに加工する。スナックやパウダーのほか、パウダーを練り込んだチョコチップクッキーも製造販売している。

 スナックを試食させてもらった。さくさくと軽い食感。香ばしく甘辛い風味で、とてもおいしい。最初はコオロギの形がそのまま残っている外観に抵抗を感じた。だが、だんだんとピーナツやいりこを食べているような感覚になった。お酒のおつまみ、サラダやスープのトッピングに良さそうだ。

 クッキーに関しては、コオロギの原形をとどめておらず、より食べやすかった。ロラン氏は「米国や欧州では、昆虫は病気を持っていて食べると危険だとか、気持ち悪いなどと教えられる。しかし、それは一部の昆虫を除いて正しくない。牛や豚だってそのまま食べれば危険だが、適切に飼育し、調理すれば安全。昆虫も同じだ」と語る。

★関連記事★
【特集】「循環経済」の旗手フィンランド~環境との両立に挑む、昆虫食も~

★【農林水産・最前線】バックナンバーはこちら

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ