人材サービス大手パソナグループが2003年に農業に参入してから15年が経過した。新規就農者の支援から始まり、本社ビルでコメや野菜を栽培するといったユニークな取り組みが話題になったが、新たに注力している事業の一つがフランス・パリからの日本食材の発信だ。
日本国内でもあまり知られていない優れた食材を掘り起こし、世界の食の中心であるパリで評価を得る。それによって、フランス料理の一流シェフに採用してもらい、ブランド力を高め、将来にわたり日本の名産として残していきたいと考えている。事業の立ち上げから携わってきた農業子会社「パソナ農援隊」の田中康輔社長に聞いた。
(聞き手=時事通信デジタル農業誌「Agrio」編集長・菅正治)
◇ ◇
―パリではどんな取り組みを行っているのか。
日本各地には、中小の生産者が手間を掛けて丁寧に作ったすばらしい食材がたくさんあるが、日本国内であまり知られていない。しょうゆでもみそでも、日本から職人が減っていくのはもったいない。価値のある良い物は残したいし、そういう商品がもっと認識、評価されて、販売を広げられないかと思っていた。
国内では競合商品が多いので、際立たせるのが難しい。それなら、世界の食の面でトップレベルとみられているフランスで、トップシェフに日本のすばらしい食材を紹介し、彼らが評価して使いだせば、日本でもプレミアムな商品として認知されていくだろうと考えた。それで14年12月にパリに行った。
フランス人はおいしいだけでは満足せず、なぜおいしいのか、どうやって作ったのか、なぜヘルシーなのかを追求し、頭でも理解したがる。われわれは今、「エピスリー・パー・パソナ」という常設のプロモーションショップを拠点に、パリで食と観光のプロモーションを行っている。
日本食材を通じて日本各地の魅力を伝えることが、日本への興味や関心を引き出すきっかけとなり、ひいては訪日観光につながる。フランスはものづくりをする人へのリスペクトが非常に強い国なので、日本の食材や職人は今後、観光資源になると考えている。
―パリではどんな日本食材の人気が高いのか。
われわれはフランスの星付き料理店に日本食材を広めている。そうした店では、日本の調味料や香辛料が当たり前に使われるようになっている。甘味が特徴の白みそはソースやデザートにも使われている。かんきつ類ではユズが浸透し、フランス人にも「ユズ」で通じるほどだ。
サンショウもブレークの兆しがある。徳島県のスダチもシェフが興味を持っており、これからのブレークが期待できる。海藻もそうだ。ノリやワカメ、コンブなど日本の海藻は質が良い。肉や魚は規制が厳しいが、調味料や香辛料は規制に掛かりにくい。
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