米イリノイ州シカゴ市にこのほど、「オグデン農場」という多目的施設がオープンした。野菜などを生産するだけでなく、地域住民に対して食育や職業訓練の機会を提供している。貧困や犯罪といった、地域が抱えるさまざまな問題を軽減する手だてになるとの期待が膨らんでいる。
(シカゴ支局・デハーン英利子)
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オグデン農場は、シカゴ植物園とランデール・クリスチャン医療センターが共同で設立した。もともとあった屋外農園に屋内農場、調理室、冷蔵室、直売所を追加した多目的施設。植物園側が運営を担い、年間運営費30万ドル(約3400万円)は農作物の販売収入のほか、政府の補助金や企業・個人の寄付金で賄っている。
北ランデールという地区にあり、広さは約1860平方メートル。コートが3面あるテニス場くらいの敷地だ。
なぜ、ここに農場をつくったのか。シカゴ植物園のアンジェラ・メイソン都市農業部門代表は「この地区では、新鮮な野菜を確保できず、生活習慣病にかかる人の割合が高い」と説明する。
北ランデール地区にはかつて、米小売り大手シアーズの本社や、家電、農業機械メーカーの工場が集中し、白人労働者が多く住んでいた。しかし、この地区に1950年代以降に移り住み、差別などで職を得られなかった黒人住民との間で緊張が高まり、68年に黒人公民権運動の指導者キング牧師が暗殺されたのを機に、黒人住民らによる大暴動が発生。これを機に、企業や中小規模商店が次々と撤退し、雇用が失われた。
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