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【農林水産・最前線】地球温暖化で北上するワイン産地~ブドウ栽培に危機~

イタリア危機的、ラマンチャ消滅も

 洪水や乾燥による山火事の増加など、フランスでも地球温暖化の影響が出ている。作物の生育の変化からそれを実感しているのがワイン用ブドウ栽培農家だ。収穫時期が早まっているという声は数年前から耳にする。

 そんな折、2人のフランス人環境ジャーナリストが、ボルドーのオノローグ(醸造家)と協力し、温暖化がこのまま進んだら32年後にどうなるかをシミュレーションした「2050年のボルドーワイン」を作った。この未来のワインの試飲会がパリであった。

(在仏ジャーナリスト・羽生のり子)

  ◇  ◇

 その2人、イヴ・レール氏とヴァレリー・ララルメ・ド・タネンベルク氏は、温暖化によるワインへの影響をテーマにした著書「ワインの危機―気候変動への挑戦」(未邦訳)を2015年に出版した。このテーマを扱った本はフランスでは初めてだ。

 レール氏は試飲会で「温暖化で植物分布が変わります。ワイン用ブドウも例外ではありません。19世紀末と比べると、フランスの気温は平均1.1度上がっています。特に顕著なのは南西部で、ボルドーの産地であるアキテーヌ地方では1.5度も上がっています」と現状を報告。その後、50年のワイン用ブドウ栽培地の欧州予想図を見せた。

 世界中の専門家で構成する科学的な機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」と米国の研究を基にシミュレーションしたものだ。ワイン用ブドウが栽培できなくなる地域ほど赤く、栽培の可能性が高くなる地方ほど青くなっている。

 「スペインのラマンチャ地方は欧州一のワインの産地で、質もおそらく欧州一ですが、消滅する可能性があります。イタリアは非常に危機的です。ヌーヴェル・アキテーヌ地方も喜べる状況ではなく、ボルドーの赤が被害を受けます」とレール氏。逆に栽培の可能性が高まる青い地域はフランス北部、英国など。「シャンパーニュは気温が1度上がる英国でできる可能性が高まります。ルーマニア、ポーランドでもワインができるようになります。一番恩恵を受けるのは北ドイツでしょう。ワイン用ブドウ農家は他の農家より気候変動に敏感で、対応の必要性を一番感じています」と言う。

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