8月に第100回を迎える全国高校野球選手権大会の歴史で、延長二十五回に及ぶ死闘が繰り広げられた最長試合がある。1933年8月19日に行われた第19回大会準決勝、明石中(兵庫=現明石)-中京商(愛知=現中京大中京)だ。
明石中の中田武雄投手と中京商の吉田正男投手が投げ合い、0-0のまま延長戦へ。当時、甲子園球場のスコアボード表示は十六回までしかなく、十七回以降は臨時に継ぎ足し「0」を並べていった。そして二十五回裏、中京商は無死満塁から敵失でサヨナラ勝ち。ゴロを処理した明石中の二塁手、嘉藤栄吉選手(2008年死去)の本塁送球がそれた。4時間55分。空前の熱戦だった。
古豪の明石を昨春から率いている高石耕平監督(37)は、偶然にも中京大中京のOB。運命的な形で伝統を引き継いでいる青年監督の心境を探り、伝説の試合に出場した両校メンバーで最後の生存者だった故嘉藤さんの実直な足跡をたどった。
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