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復興の道を探る ~国道6号北上記~

「福島復興のシンボルに」

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被災した福島県沿岸部を南北に走る国道6号。被災地の「復興」を進める上で重要な基幹道路であり、原発の廃炉に向かう作業員を乗せた車や、除染廃棄物を輸送するトラックなどが日夜行き交う。大震災から7年、取り巻く風景が変わりつつある国道6号を自動車で北上した。その道をたどりながら、さまざまな立場の人々に復興に対する思いを聞いた。(福島支局・菓子翔太)

 常磐自動車道広野インターチェンジ(広野町)を降りたところから、国道6号の北上を始めた。少し進むと、反対車線を挟んで海側に縦長の看板が見える。サッカー練習施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)のものだ。東京ドーム10個分に当たる49ヘクタールの面積を誇るJヴィレッジは、1997年の開設以来、東日本大震災までの間に毎年50万人前後、累計約680万人が来場。ワールドカップ日本代表のトレーニングキャンプなどに利用されてきた。

 しかし、震災と原発事故で全面休止に。その後、東電の福島復興本社が置かれ、作業員が防護服を着て福島第1原発に向かうバスに乗る場所として利用されるなど「廃炉への対応拠点」となった。株式会社Jヴィレッジの代表取締役副社長上田栄治さん(64)は、震災後の2013年に訪れた際、にぎわっていた震災前との違いに衝撃を受けた。「これだけピッチの上に土砂を入れて駐車場にして、しかもスタジアムには仮設の寮ができているという状況を、本当に以前のように戻せるのかと思った」と振り返る。

 だが、廃炉の拠点としての役割を17年3月に終え、Jヴィレッジは新しく生まれ変わろうとしている。全天候型のサッカーグラウンドや300人を収容するコンベンションホール、宿泊棟を新設。今年7月28日に一部が再開し、19年4月には全面オープンする予定だ。20年の東京五輪でサッカー日本代表が強化拠点として使うことも決まった。

 「われわれもそう思っているし、知事もはっきりと言われているが、『福島復興のシンボル』になりたいと思う。スポーツで復興を推進する役割を果たしたい」と意気込みは十分。イベントなどでの利用も視野に入れ、再開に向けて準備を進めている。

 復興のゴールと言えるのは、どういう状態になった時か、上田さんに聞いた。

 「廃炉になって、ふるさとから出なきゃいけなかった人たちもいるので、戻って生活できるのが一番良い。少なくとも、自分たちの故郷には帰れる状況がつくれる。そこがやっぱり復興のゴールになるんじゃないかな」

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