◇陽炎のように曖昧な30年
十数年にわたり若者の消費行動を観察し平成の若者気質に精通したマーケティングアナリスト原田曜平さんに、時代の特徴と先行きを尋ねた。
―ずばり平成とは。
昭和のインフレに対して平成はデフレ。経済成長からバブルを経てできた無駄なぜい肉をそぎ落としてきたが、スリムになり過ぎて次の時代へのステップになっていない、そんな感じ。みんなが自信をなくしている。
―総じて暗いと…。
いつの世も全てが暗いわけではないが、割合で見れば、時代のあおりを食って「昭和が良かった」と感じている人は多い。昭和幻想から抜け切れず何となく終わってしまう、陽炎(かげろう)のように曖昧な30年だった。
―情報技術の発達は目覚ましいが、影響は。
検索の力が大きい。記憶しなくなり、学力が低下したといわれるが、身に付いた新しい能力に注目すべきだ。近くにいない人ともつながり、共感力は高まっている。苦境にある人の情報も得やすく、道徳の授業など要らないのではないか。ネット情報が全てと思う人もいて注意は必要だが。
―発信力も強まる。
発言権が個人に下りてきたのは確か。昔はメディアなど一部から出た情報について周囲の人と話すくらいだったが、今や誰でも発信できる。買い物も遠くに行かなくても手に入るなど便利になっており、個人の自由は、息苦しかった昭和と比べて平成の方が大きい。
―最近は映像重視。
ほとんどの人がスマホを持ち、特に若い人は毎日きれいな写真を撮っては載せている。美的感覚の平均値は上がってきている。しゅっとしたもの、おしゃれなものは増えていく。昔のヤンキーはつっぱりにリーゼント、明らかにバッドセンスだった。今のヤンキーはEXILE(エグザイル)にあこがれ、基本的におしゃれだ。全体的にそういう感覚は上がっていくだろう。
―若者向けの商売を考えるべきだ、と。
働く人が減るから経済は縮小する。引退した人を切り離し、現役世代の中でどう消費させるかを考える必要がある。今は社会全体が若者に目を向けていない。日本は儒教の国だから、若者はおれたちに従え、みたいなところがあって、若者を客としてみるユースマーケティングがへた。2025年には団塊世代が後期高齢者になるので、そろそろ切り替えないと。
―平成の若者は何にお金を使うのか。
なかなか使わない。お金を使わずに楽しんでいる。昭和から平成の途中まではみんながこぞって同じことに熱中する、ある意味変な時代だった。そこから開放に向かったのが平成。次の時代はもっと個人主義化が進む。チームワークは日本の強みだから、ばらばらになり過ぎないように注意は必要かもしれない。(2018年5月配信)
◇ ◇ ◇
原田 曜平さん(はらだ・ようへい)慶大卒。博報堂生活総合研究所などを経て博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。著書に「さとり世代」「平成トレンド史」など。1977年4月4日、東京都生まれ。
政界インタビュー バックナンバー
新着
会員限定