研修棟を訪れた4月下旬、新入社員が研修を受けていた。東京メトロは2018年度、約400人を採用し、うち300人弱は営業職、つまり駅に配属される若人たちだ。この日、ある教室では定期乗車券の取り扱いに関する研修が行われ、彼らは分厚い冊子を手元に置き、教官の講義を真剣な表情で聞いていた。営業職の新入社員は4月末に各駅に配属され、指導員の下で2カ月間、駅の業務全般をみっちりと学び、7月から単独業務となる。
総合研修訓練センターが完成した2年前、東京メトロのある幹部がこう言って戒めたという。「建物ができたから、それで喜んでいるんじゃないぞ。事故を減らし、万一事故が起きた場合も復旧までの時間が短くなり、それをお客様が実感してから喜べ」。
安全・安心な列車運行、快適なより良いサービスにゴールはない。列車運行も接客などのサービスもすべて、機械ではなく東京メトロの各社員が担っている。さまざまな工夫の凝らされた訓練・研修をベースに各社員がそれぞれの職場で日々、努力を続けてこそ、利用客の東京メトロに対するさらなる信頼につながると言いたかったのであろう。グループ全社社員を含めて約1万2000人を対象にした「安全研修」が行われているのも、それを表している。休憩時間に、屈託のない笑顔で雑談する新入社員の姿を見ていると、利用客の一人として「頑張ってください」と思わず激励したくなった。
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