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安全・安心の「始発駅」 東京メトロの訓練センターを探る

10両編成用の訓練ホームも

 トンネルを出てすぐの場所にある「センター西駅」は3両編成向けの訓練ホームだ。しかし、3両編成で運行される東京メトロの路線は、先述の千代田線綾瀬-北綾瀬間と丸ノ内線中野坂上-方南町間だけ。逆に、東西線や有楽町線など10両編成で運行されている路線の方が多い。そうした路線の駅員や乗務員向けの設備は、隣接する新木場車両基地に10両編成向けのホームが1面1線設置されており、こちらを「センター東駅」と称している。

 センター東駅は車両基地にあるため、ホームは真っ直ぐに伸びていて見通しが良い上に、最後部にいる車掌のドア開閉作業を支援するためのモニターカメラも設置されているから、訓練にならないのではないか。素朴な疑問をメトロ社員にぶつけると、ホーム上に多くの人がいるだけでも車掌の視認性は悪くなるので、訓練参加者の中から数人を指名して、車掌がドアを閉めようとする時に駆け込み乗車などわざとドア閉めの邪魔をしてもらうのだとか。時間があれば、障害物をホーム上に置き、その陰から駆け込み乗車をしてもらうこともあるのだという。

 総合訓練研修センターの研修棟そばで目を引く橋梁(きょうりょう)と高架橋の構造物。これらも訓練に活用されている。高架区間の東西線東陽町-西船橋間を模した施設で、実際の橋梁ではなかなか見ることのできない支柱部分の構造を土木系の職員に理解してもらうのが狙いだ。

 研修棟に戻り、各種教習室を見て回る。スケルトン教習室では多機能トイレなどの床や天井の骨組み、排水の仕組みなどが見えるようになっているほか、スプリンクラー教習室はガラス張りになっていて、実際に散水し、その様子を外から見ることもできる。本物の駅で散水すれば機器類の故障につながりかねないため、訓練施設ならではの設備といえる。ガラス張りの教習室の中では、駅構内に水が流入するのを防ぐための止水板の設置訓練を行うこともできる。

 信号教習室には大きな模型の線路が置かれ、信号に関する実践的な知識を学べるようになっている。楕円(だえん)状に造られた模型の中に操作盤があり、決められたボタンを押すと青信号になるとともにポイントが切り替わって進路ができ、電車が走りだす。東京メトロの信号は通常時には事前に設定されたプログラムに沿って自動的に切り替わるが、例えば人身事故などが発生した場合、途中駅での折り返し運転のために信号切り替えを手動で行わなければならない。信号の操作は、間違えるとその後の列車運行に大きな影響を与える難度の高い業務だ。そのため、社内の資格試験に合格した社員だけが手動の信号切り替えに携わることができる。また、近くに車両基地があったり、複雑なポイントが置かれたりしている北千住や西船橋、綾瀬、小竹向原など計10駅には、信号切り替え専門の社員を配置して運行の安全性を担保している。

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