2階のステップアップステーションセンター(SSC)から1階の模擬駅ホームに下りる。案内板には「訓練線」と記され、緑色の円の中に「K」の文字が。緑色は千代田線のラインカラーだ。エスカレーターでホームに下りる途中で見えた別の案内板によると、この駅は「センター中央駅」で、「センター東駅」と「センター西駅」の間にあるようだ。すべてが本物仕様のため、「千代田線に新しい支線ができたのか」と錯覚しそうになった。ホームは2本の線路に挟まれた島式で、ホームドアのある1番線には3両編成の電車が止まっている。2番線にホームドアはない。
この電車は6000系で、かつては千代田線綾瀬-北綾瀬間2.1キロで乗客を運んでいた。6000系のほかに、現役の同線車両05系も訓練に活用している。電車が訓練として走行できるのはセンター西駅までの約400メートル。3両編成は全長60メートルと短いため、時速30~40キロ程度までは出せるという。センター西駅までの間に長さ約180メートルのコンクリート製トンネルが設けられているのは地下鉄会社ならではだ。トンネルの中では「部門横断訓練」などが行われる。同訓練の詳しい内容は次のページで紹介するとして、センター中央駅-センター西駅間は「運転実習線」と呼ばれている。
では、センター東駅方面はどうなっているのか。線路は延びているが、列車は通常走らず、「センター東駅」すらない。センター中央駅から約300メートルのこの部分は「技術実習線」として、架線への電気供給を止めることで感電を恐れずに技術系の各種研修・訓練を行うことができる。技術実習線と運転実習線を合わせた約700メートルを「訓練線」と称している。
センター中央駅に話を戻そう。ホームの構造が分かるよう、駅員でさえ普段は見ることのないエスカレーターの下側や柱の内部などが見えるスケルトン構造になっているほか、天井の一部も骨組みが見えるよう、板をあえて取り付けていない。非常停止ボタンもあり、案内役のメトロ社員から「どうぞ押してみてください」と勧められる。訓練用だから気後れ無用なのだが、実物はむやみに押してはいけないので「本当にいいんですか」とつい確認。押してみると、大きな警報音がホームに鳴り響いた。実際の駅利用時にはできれば聞きたくないものだ。
実物の駅を再現したとはいえ、実物と違う点が他にないわけではない。研修・訓練に使うためのマイクが天井からぶら下がっているのだが、メトロ社員に案内されるまで気付かなかった。
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