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「木密解消」苦悩の下町商店街 幹線道新設で地域分断危ぶむ声

終戦直後の道路計画

 首都・東京を襲う直下型の巨大地震は、今後30年以内に約70%の確率で起きるとされる。甚大な被害が見込まれ、老朽化した木造家屋が集まる「木密地域」では大規模な火災が予想される。東京都は延焼防止のため木密地域で幹線道路新設に着手しており、活気あふれる下町の商店街も分断される計画だ。少子高齢化やチェーン店の増加などで厳しい環境が続く中、岐路に立たされる商店街や地元住民を取材した。(時事通信社会部 山中貴裕)

 巨大ターミナルの池袋駅からJR埼京線で北に5分、十条駅(北区)を降りると、駅前広場には人が行き交う商店街の入り口がある。東京3大銀座商店街の一つ、「十条銀座商店街」だ。アーケードの長さは南北約370メートル、東西約150メートル。生鮮食品店や洋品店など約200店舗がひしめき、毎日延べ約1万5000人の買い物客らでにぎわう。

 この十条銀座から十数メートル離れた住宅街で、ある幹線道路の建設計画が進んでいる。車道と両側に広い歩道が備わった最大幅30メートルの道路が商店街のすぐ脇を通る。都が首都直下地震対策として、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年度の開通を目指す「特定整備路線」のうちの1本だ。

 現在ある道路の拡幅でなく住宅を取り壊して新たに建設する予定で、約220軒の立ち退きが見込まれる。延長は約890メートル。十条銀座のアーケードとほぼ並行して住宅街を貫き、北は環状7号線、南は地域の避難場所となっている東京家政大学を結ぶ。

 この路線は、終戦直後の1946年に戦後復興のために計画決定された。自宅敷地の半分が建設予定地になっている盛家周二さん(68)は「地元住民が納得した話なら諦めもつくが、いまさら70年前の計画を持ち出して『出て行け』と言われてもやり切れない」と憤る。

 長年凍結されていた計画が突如動きだしたのは5年前。都は12年に特定整備路線を選定し、15年に国の認可を取得して用地買収を推し進めている。

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