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「関ヶ原」初の映画化 「正義」貫く「新たな三成」描く

「今、一番生きていてほしい人」と原田眞人監督

 戦乱の世に「正義」と「愛」を貫こうとした「敗者」がこの映画の主役だ。

 司馬遼太郎の歴史小説「関ケ原」が初めて映画化され、8月26日から東宝系で全国公開される。主人公は、関ヶ原の戦いで、徳川家康率いる東軍と激突した西軍の石田三成。自ら脚本を書いた原田眞人監督が、岡田准一を主演に迎えて描こうとしたのは、戦いには敗れても“敗れざる者”としての魅力を放つ「新たな三成」像だ。(敬称略)

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 「不器用で、つまらないところで怒鳴ったりする。友達になるのは難しいかもしれません。でも、あの時代に生きていた人の中では、今、一番生きていてほしい人。現在の政治や経済を見ると、今こそ、三成のような潔癖な正義漢が必要ではないでしょうか」

 原田監督は、歴史上の人物としての三成をそう評価する。

 関ヶ原の戦いがあったのは、慶長5年9月15日(西暦1600年10月21日)。天下統一を果たした豊臣秀吉の死からわずか2年後だった。

 秀吉の生前、朝鮮出兵をきっかけに、福島正則、加藤清正ら「武断派」の武将たちと、三成ら「官僚派」は対立を深めた。秀吉が病没すると、まだ幼い遺児の秀頼の下、豊臣政権の内部分裂は先鋭化。そこに、自らが天下人になろうと野望を抱く徳川家康がつけ込み、天下を二分する東軍と西軍の決戦へと、歴史の歯車が回っていく―。

 秀頼に忠誠を尽くす三成は、一般的には「切れ者だが、冷たい」といったイメージが強い。しかし、スクリーンの中の三成は、「正義とは何か」を考えていた「純粋過ぎる」武将として描かれる。原田監督は「司馬先生の原作は、三成のよい点も悪い点も非常に公平な見方をしていました」と話す。

 ■岡田准一「三成公に喜んでもらえる役」

 その旗印「大一大万大吉」の意味は、「ひとりが万民のために尽くせば天下は栄える」だという。そして、原作の描写する三成は、美しい風貌を持った細面の男。「そのイメージにぴったり」(原田監督)という主演の岡田は、今回の撮影に当たり、京都の大徳寺・三玄院にある三成の墓(一般には非公開)にお参りして、「三成公に喜んでもらえる役柄を演じます」と報告したという。

 岡田は、日本アカデミー賞助演男優賞を取った「蜩(ひぐらし)ノ記」(2014年、小泉堯史監督)以来の時代劇映画出演。秀吉に仕える黒田官兵衛を演じたNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の経験もあり、三成の居城・佐和山城での戦闘訓練をはじめとする乗馬シーンも見事にこなして、「岡田三成」を演じ切った。

 対する家康役は、「日本のいちばん長い日」(2015年)でも、原田監督とタッグを組んだ役所広司。眉や涙袋、頬などに特殊メークを施し、“タヌキ親父”にふさわしい恰幅(かっぷく)のよい体形に見せての迫力の演技で、圧倒的な存在感を示す。

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