会員限定記事会員限定記事

ハートの新球、5つの秘密

③デザイン 機能美のハート

 7代目となる新ボールのシンボルとなりそうなのが、表面を埋め尽くすハート型のディンプルだ。なぜハート型なのか。宗像専務理事は「最初からハートありきではありませんでした。ディンプル率を80%に上げるには、この模様が一番最適だった」と説明する。

 1938年に誕生した初代は、縦長の細い溝の列が何層にも重なり、その形状が菊の花のように見えることから「菊型」と呼ばれた。

 51年から使用が開始された2代目は、デザインが大きく変化した。金型技術の革新により、硬式のような縫い目の模様が施され、表面には丸いディンプルが登場した。以降は約半世紀の間、このデザインが基本となる。60年からの3代目は丸いディンプルの間に小さな星型が入った。85年からの5代目は硬さが増し、ディンプルは楕円(だえん)形となった。現在30代以降で軟式野球の経験者は、軟式のボールというと2~5代目を思い浮かべる人が多いだろう。

 2005年から使用されている現行の6代目のデザインは、5代目までと一変。表面は線のように並んだ小さい丸型のディンプルで三角形の模様が描かれ、縫い目は丸みを帯びた。宗像専務理事は「5代目までは、例えば三塁線に飛ぶ打球はスライスするように飛んでいった。それを防ごうとした6代目は、素直な打球が飛ぶようになりました」と話す。

 そして、さらなる飛距離増を求めて、ハート型のディンプルが登場する。宗像専務理事は「ゴムボールは硬式よりも軽く、バットで打つと形が変化するのはしょうがない。それを、ディンプルによって変えて、空気抵抗に逆らわずにスムーズに飛ばす。これは本当にすごい発想です」と語る。桜の花びらのようにも見えるどこか優雅なハート型は、性能の向上を目指した機能美のデザインと言える。

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ