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「胸毛の横綱」再来か 高安=力士と「毛」あれこれ

普通は擦り切れる

 大相撲の関脇高安が大関に昇進した。高安といえば、思い切りの良い取り口やまじめな人柄だけでなく、全身を覆う濃い体毛も特徴の一つだ。力士と直接触れ合うチャンスが多い巡業では、高安の背中の毛に触りたくてやってくる女性ファンもいる。大関昇進を祝して、力士と「毛」にまつわるエピソードを―。

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 大半の力士は、稽古で体毛が擦り切れる。胸毛には相手の頭がぶつかるし、脇の下の毛もおっつけられたり下手を差されたりするうちになくなる。大相撲を初めて生で見た人は、吊り屋根のライトに照らされて輝く、力士の美しい肌に見とれるものだ(風呂上がりにニベアを塗っていた横綱もいたが)。

 それでも、体質や毛の質に個人差があるせいなのか、毛深い力士はいる。オールドファンが真っ先に名前を挙げるのが横綱朝潮だろう。徳之島出身で、189センチ、145キロ。肩幅が広く、眉毛やもみ上げも太くて、独特の体型と風貌だった。当時、なぜか「胸毛のある力士は横綱になれない」といわれたが、1959年春場所後に最高位を射止め、「胸毛の横綱」と呼ばれた。大阪場所にめっぽう強く、四股名のフルネームが朝潮太郎だったことから「大阪太郎」の異名もあった。

 引退後は高砂親方として高見山、富士櫻、大関朝潮、大関小錦らを育てた。いかつい風貌に似合わず気持ちの優しい人だった。「胸毛の横綱」の他に、口の悪い相撲関係者は「毛ガニ」とも呼んでいた。88年10月、58歳で死去。

 「ジェシー」こと高見山も立派なもみ上げと胸毛がトレードマークだった。初の外国人力士優勝を果たすなど昭和の相撲人気を支え、40歳目前まで土俵へ上がり続けた名力士。現役晩年は、胸毛に白いものが交じっていた。

 引退後は東関親方として横綱曙らを育て、2009年に日本相撲協会を65歳で定年退職した。真っ白なあごひげをたくわえ、赤いジャケットでも着るとまるでサンタクロースだ。

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