「夫が大人の発達障害で、私はいわゆるカサンドラ症候群になってしまいました。病院に通い始めて少しずつ落ち着いて、ようやく周りにも少し話せるようになってきたのですが、驚いたことに、発達障害の身内によってつらい思いをしている友人が周囲に何人もいたのです。この問題は、本当に当事者しか分からないことで、声を上げず苦しんでいる人も多いと思います。広く社会に知ってもらいたいと考えました」
約半年前、古くからの知人にもらったメールには、思いがけない内容が書かれていた。「大人の発達障害」「カサンドラ」と、聞き慣れない言葉も並ぶ。そして何より、知人が深刻な問題を抱え、体調を崩すまで悩んでいたことに驚いた。少し前に顔を合わせた時は、てきぱきと明るく、元気な様子にしか見えなかったのだ。
これをきっかけに「発達障害」について調べ始めたが、2005年5月施行の「発達障害支援法」によって、「発達障害」は「自閉症」「アスペルガー症候群」「学習障害(LD)」「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」などと定義された。同法の施行以降、教育現場などでの取り組みも進み、一般の認知、理解も急速に広がったという。
ただ発達障害といえば「子どもの問題」という認識で、「大人の発達障害」についてはあまり考えたことがなかった。しかし、幼児期に明らかな発達の遅れがないアスペルガー症候群などの場合、子どもの時には気付かず、成長とともに対人関係の不器用さがはっきりとし、職場で問題を抱えるようなケースが多いという。最近は、医療機関や相談機関を訪れる成人も急増。発達障害は大人の問題としても深刻だ。
そして「カサンドラ症候群」。これは知人のメールで初めて目にした。ウェブ上で検索すると、意外に関連情報は多く見つかり、「相手の気持ちや立場を理解することが困難な発達障害を持つ夫と、うまくコミュニケーションを取れずに苦しみ、妻が身体的、精神的な不調に陥る」ような状況を指すことが分かった。妻が発達障害で、夫がカサンドラになる場合もあるが、障害の発生率は男性の方が高いため、女性のケースが多いという。
今回、この「カサンドラ症候群」をめぐり、当事者、関係する人たちから話を聞いた。「どうして自分たちはこんなふうになってしまうのか」「何が悪いのか」。家庭という密室で煩悶(はんもん)し、出口を探す人が多く存在することを知り、その声を伝えたいと思った。(時事通信社・沼野容子)
特集
コラム・連載