岡田准一さん主演のヒューマンサスペンス「追憶」(5月6日から、東宝系)で、主人公の妻を長澤まさみさんが演じている。映画界の大御所、降旗康男監督と木村大作キャメラマンが9年ぶりに組んだ重厚な作品。大ベテランのメガホンとキャメラを前に、夫婦になり切れず揺れる妻を演じた長澤さんに聞いた。
(時事ドットコム編集部)
本作のキャッチコピーは「会いたくても、会えなかった、愛する人へ―」。サスペンス仕立ての物語の中に、遠く重い記憶を抱えて生きる男たちとその家族の愛や葛藤が描かれ、見る人の心にゆっくり沈殿していく。
長澤 脚本を読んだ時は、どこか懐かしく感じるような、いろんな人の愛情や思いが詰まった普遍的なお話だなと思いました。事件とともに悲しい記憶にはなっているんだけど、子どもの頃に憧れの人がいたり、すごく探しているけど会えない人がいたり、でもその人たちと会っても昔のようにはいられないとか…。私は関係性が終わりそうな夫婦の妻役で、離れていってしまう気持ちがあって、だけどばっさりと切り捨てることができない関係性とか。そういった人の思いが詰まっている分、どこかにあるような温かさを感じましたね。
主人公の四方篤(岡田)は富山県警の刑事。市内で幼なじみの川端悟(柄本佑)と偶然、再会するが、別れた後で悟が刺殺体となって発見される。捜査線上に浮かんだのは田所啓太(小栗旬)。3人は幼い頃、親と暮らせず、喫茶店を営む仁科涼子(安藤サクラ)の元に身を寄せていたが、25年前のある事件を機に散り散りになり、二度と会わないと誓ったはずだった。篤と妻の美那子(長澤)は別居中。一人で何かを抱えて生きる篤の傍らで、夫婦になれない「さみしさ」と無力感を覚えていた。
長澤 物理的な距離から感じる安心感と、心の距離から感じる安心感は違うんだなと。それはたぶん、信頼ということだと思うんですが、人は自分自身のことが一番分からない。ただそれは、人と関わることで分かるのではないかとも思うんです。人と関わるから自分がさみしいと知るし、人と関わって自分の思いを知るということがたくさんある。それを感じられるのが家族だと思うんです。
人と関わることで、そこから信頼とか関係性が生まれて新しい感情が芽生えてくるから、距離が離れているからさみしいとか、空間に1人でいるからさみしいということではないと思っています。
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