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空の安全を支える現場 ディスパッチャーと整備士

使命と責任負う仕事 日本航空

 日本を代表する航空会社・日本航空(JAL)は、国内線と国際線を合わせてグループで毎日約990便を運航し、年間約4000万人を運んでいる。2010年に経営破綻したものの、公的支援により業績は大きく回復。新規路線開設などを制限してきた国土交通省の経営監視が17年3月で終了し、羽田-ニューヨーク線を39年ぶりに復活させるなど、新たな成長に向けて動き出した。1985年、520人が犠牲となるジャンボ機墜落事故を起こした日航。二度と事故を起こしてはならないという使命と責任を負い、多くの社員が乗客の目に付かない場所で日々の運航を支えている。(時事通信社会部 山中貴裕)

「地上のパイロット」

 航空機の飛行計画を1便ごとに作成する「地上のパイロット」と呼ばれる仕事がある。気象変化を予測して飛行高度やルートを選定し、燃料の搭載量を決定するディスパッチャー(運航管理者)だ。刻々と変化する気象情報に目を凝らしながら飛行中の航空機にトラブルがないか、絶えず監視する。

 和久井修治さん(31)は日航本社のオペレーション・コントロール・センター(OCC)に勤務する若手だ。08年の入社後、羽田空港や那覇空港での勤務を経て、14年にOCCに異動。補助業務を約2年続けた後、16年に晴れてディスパッチャーとなった。

 同社では、国家資格に加えて社内資格も取得しなければディスパッチャーとして勤務できない。社内資格の審査に進むには、半年にわたって行われる「見極め」と呼ばれる実技試験に5回合格する必要がある。試験項目は計画作成から緊急時対応まで多岐にわたり、10年に国家資格を取った和久井さんは16年に社内資格を取得した。

 OCCには約80人のディスパッチャーが在籍し、国内線と国際線を担当する。24時間態勢で勤務し、国内線は約10人のチームでおよそ200便の計画を作成。当日の天気予報を基に、機体の揺れが少ない高度やルートを選定して燃料の搭載量を算出、不測の事態に備えて代替着陸できる空港を選ぶ。

 こうした情報が記載された飛行計画は離陸2時間前に国交省航空局に送られ、機長と副操縦士が搭乗前に最終確認。機長らはこの計画を基に、乗客のシートベルトを外すタイミングを判断している。

 燃料搭載量は、国際民間航空機関(ICAO)の基準に基づき航空法で規定されている。機材故障や天候悪化、急病人の発生などのトラブルで目的地を変更する場合に備え、代替空港まで飛行してさらに上空で30分待機できる量を搭載しなければならない。ただ、燃料を積み過ぎると燃費が悪化したり、離陸できる制限重量を超えたりする恐れがある。ディスパッチャーは、基準を満たしつつ最適な量を算出する。

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