岡田や小栗、柄本らが「人間の抱えるもの、守るもの」の重さに向き合う心情の機微をどう表現しているかも、映画の見どころ。撮影中、俳優陣と食事に出る木村に、降旗が「伝言」を頼んだことがあったという。25年ぶりに再会した篤と啓太のせりふを考えるように、という岡田、小栗への「宿題」。「俺たちは、もっと早く会うべきだった」。この篤のせりふは、2人が相談して出した「答え」だった。
降旗 せりふを選ぶときに、一番参考になるのは俳優さんの気持ち。言葉の意味ではなく、やっぱり役者の生の声がお客さんに届くことが大事だと思います。高倉健さんは若い女優さんとせりふのあるシーンがあると、自分でその子を呼んで「ここをこう変えるよ」とリハーサルをしていて、それが映画をとてもよくする要素になっていました。岡田君と小栗君なら十分、自分の意図を実現してくれるだろうと思ってお願いしました。
木村 現場に立つことで俳優さんは変わります。台本に設定は書いてあるけれど、現場を何日か経験した上で、何を考えるのか、どうなるかというのが、演技への問い掛けなんですね。
―まさに高倉さんらがやっていたことが、若い世代につながったわけですね。
木村 みんな、健さんを目標にしているよね。特に岡田、小栗の2人は。岡田が現場にいる姿はやっぱり、健さんに相通じるところがありますね。
降旗 立っているだけで感情がこもっているのが、主演の狙える俳優の条件。岡田、小栗、柄本の3人は映っているだけで、感情が見ている人に伝わってきます。これからどんどん育っていくと思います。
―若い世代との仕事で、日本映画のいろいろなものが受け継がれていくことを意識していますか。
木村 教えている意識はないが、見られているという意識はありますね。見るということがいかに大切か、それでしか学べないというのは、この年になっての実感です。
―監督は、先輩から吸収したものが次世代に伝わればいいなと思いますか。
降旗 それは思いますね。意識的にできるのか、無意識的なのか、分かりませんが。やっぱり「胸から上」ではなくて、「足元から俳優」と感じられる俳優さんになってほしい。健さんらがそうでしたからね。
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