「追憶」の原案は、脚本家青島武と映画監督の瀧本智行によるオリジナルストーリー。幼なじみの3人を刑事と事件の容疑者、被害者に据えたサスペンスドラマを、降旗と木村は、詩情豊かな作品に仕立て上げた。
降旗 とらわれた過去と闘う男たちの姿が面白いと感じてその脚本を選びました。いいことをした、正しいことをしたとかではなく、どう生きるのか、という人間たちのドラマです。
脚本は決定稿があったわけではありません。作る一歩一歩がまた、新しく考え出さなければならないものを生み、撮影が済んでから完成したというくらい、変わったと思います。
―作品の要素を付け加えたわけではなく、せりふや人間関係の細やかなところが変わったということですか。
降旗 そうですね。そういうやり方はいつものことなので。
―映像では日本海や能登の間垣(海の強風を防ぐ竹の垣根)の集落、立山連峰を望む街並みなどが非常に印象的でした。
木村 最初に話した時、降旗さんは「ポエジー(詩情)を撮りたい」とおっしゃっていました。僕は監督作品で山ばかり撮っていたので、「山にはキャメラ向けません。海と太陽を撮りゃいいですね」と。ただ、山にも3回くらい向けましたが(笑)、それは地方都市の特徴ですから。
―人間の心の機微で見せていく作品でもありますね。人気女優も普段の華やかさをかなぐり捨てて演じていますが、撮影しがいがあったのでは。
木村 この映画は女優も含めて全員がノーメーク。俳優さんが華やかでも、その華やかさを考えて撮ったことはないですね。「作品に登場したあなた自身を俺は撮る」ということかなあ。だから、現場に立った俳優の素の部分を撮るのに、すごく神経を使います。そのための多重キャメラだったりするわけですよ。
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