若い女性が乳がんを発症すると、治療だけでなくその後の妊娠や出産、授乳などにも多くの不安や苦悩を抱える。医療の現状と課題を学び、当事者らが体験を共有する「Pink Ring(ピンクリング)サミット2017」が、東京都中央区の国立がん研究センターで開かれた。若年性乳がんの患者や研究を支援する団体「Pink Ring」の主催で、今回が7回目。遺伝と発症・発見の関係、妊娠・出産のリスクと治療法などをテーマに講演や交流会が行われた。(時事ドットコム編集部)
◇ ◇ ◇
第1部では、昭和大学病院乳腺外科教授で日本乳癌学会理事長の中村清吾さんが「若年性乳がん、遺伝性乳がんについて」と題して講演した。
乳がんと診断される人は年間9万人。この30年で4倍以上に増えた。食生活の欧米化や飲酒量の増加などが原因とみられる。若年性とは一般的に35歳未満で罹患(りかん)した場合で、増加率は40歳代後半以降に比べて高くはない。乳がん患者数に対する割合も35歳未満は2.7%、30歳未満は0.5%だが、乳がん患者が増える中、若年性も人数は確実に増えている。
乳がんは肥満が発症リスクを高めるが、若年性はむしろやせている人に多い。国が行う検診は40歳以降、2年に1度なので、触って気付く自己検診発見率が8割程度を占めるのも特徴だ。
早期発見に努める手掛かりの一つが、遺伝の可能性を考えること。乳がんの場合、5~10%が先天的な遺伝子異常によるものではないかといわれている。まずは遺伝子の50%を共有する父母、きょうだい、子ども、次いで25%を共有する祖父母やおじ、おばの病歴が重要で、中村教授は「これらの人が何歳でどんながんになったか。特に45歳以下でがんになった人が複数いると、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の体質があるかもしれない」と話す。
この20年余、遺伝性乳がん・卵巣がんはBRCA1、BRCA2という二つの遺伝子の変異が原因ではないかとして、研究が進んできた。生まれつきこの遺伝子に異常があることを「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」と呼ぶ。そして乳がん、卵巣がんだけでなく膵(すい)がん、前立腺がんにもなりやすいことが分かってきた。
男性は乳がんになりにくいので気付かないが、実は父親が原因遺伝子を持っていることもある。このため「男女を問わず近親者に複数の膵がんや前立腺がんの人がいたら、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の可能性を意識した方がいいといわれてきている」と中村教授。
新着
会員限定