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トランプとダークサイド

諸帝国の逆襲

 ロシアや中国の動きは「諸帝国の逆襲」といえます。国家意思としてのダークサイドともいえるかと思います。ダークサイドが世界中を覆い、その一部から「諸帝国の逆襲」が起きている。

 現在、世界は大国、そして大国に準じる国で構成される2つのリーグがあります。メジャーリーグが米国、中国、ロシアです。マイナーリーグは日本、英国、EU、インドなどを中心とする国々です。

 「諸帝国の逆襲」というのは、メジャーリーグの米国以外の残りの2つの勢力(中国、ロシア)が力による現状変更を目指して、逆襲を試みている。これが基本的な構図です。

 メジャーリーグの力関係を見ると、今は米国が1強で、あと2つの中ロが2弱です。その状況がどう変わっていくか。2弱のうち中国はどちらかというと昇り竜です。今後、1強(米国)と、その次に中国、そして1弱のロシアというように変わっていくと思います。

 メジャーリーグでの「力のシフト」は、必ずマイナーリーグに影響します。メジャーリーグの1チームの力が仮に低下したとしても、それが「世界の終わり」ではありません。そのメジャーリーグプレーヤーをマイナーリーグの有志が支援すればいいわけですから。

 トランプが「選挙モード」から「統治モード」になっていくのを日本は手伝うというか促していくことはできると思います。トランプが変な方向を向くということは、世界中の米国の同盟国が影響を受けるわけですから。

 日本は領土も小さいし、人口も減っているし、十分な軍事力はない。だから誇りを持ってマイナーリーグでいいと思います。日本にとっては絶好のチャンスだと思います。米国の大統領とうまくやりながら、あの人に世の中の現実を教えていくのです。

 ユーラシア大陸のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)という観点で言うと、海洋国家日本からすれば、ロシアと中国をどう競わせるかということが肝要になります。欧州は東方のロシアだけを見ていればいいのですが、日本はロシアと中国を見なければいけない。両者が結託されては困るし、どちらかが強くなり、手が付けられないくらい強大化してもらっても困る。

 両方とも覇権国家を目指している点は気掛かりですが、今のように、そこそこやっている状態が、バランスが取れて、最も良いかもしれません。陸の2大勢力である中国とロシアを均衡させる。その上で、両国周辺の海域での自由航行を、フィリピン、シンガポール、オーストラリアなどとの海洋国家連合の共同で引き続き維持する。これが日本の戦略であるべきです。

※宮家邦彦氏の内外情勢調査会緊急全国懇談会での講演(2016年11月21日)と新刊『トランプ大統領とダークサイドの逆襲』(時事通信社)から構成しました。

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