―今回、雀右衛門さんを取材したのは東京・国立劇場。開場50周年記念公演として10月から3カ月に分けて「仮名手本忠臣蔵」が通し上演されている。インタビュー後、11月の公演で演じた「祇園一力茶屋の場」の遊女おかるのこしらえを見せてもらった。
午後0時50分、楽屋着から浴衣に着替え、「さあ、顔を拭いて始めようか」と鏡台に向かった雀右衛門さん。びん付油を顔から首、背中にかけて念入りに塗っていく。「今で言うファンデーション。丁寧に塗ると、白粉がむらになりません」。固めのびん付油で眉を塗りつぶし、鼻筋から水性の白粉を塗り始めた。弟子に襟足を手伝ってもらい、顔から首まで白粉を塗ったら、スポンジではたいて余分な水分を取る。目の横から頬にぼかすようにピンクのグラデーションを入れると、立体感と華やぎが出た。
午後1時14分、紅で目張りを入れ、唇、眉も紅で描く。「目張りは、それぞれに自分の目に合った入れ方になります。私は目が小さい方なので、できるだけ大きく見えるように」。眉に油墨を重ね、化粧用の鉄漿(おはぐろ)を付け、口紅をさす。およそ30分で完成した。
「お化粧が上手な父の弟子が教えてくれました。それぞれの家で口伝のように伝わっていくもので、これはうちの親がやっていたのとほぼ同じです。おかるは傾城ですから、きれいに白く、女性らしさが強調されるようにします」
衣装を着け始めたのは午後2時半ごろ。着付けが終わると、床山さんが「おはようございます」と鬘(かつら)を持って楽屋へ。櫛でなでつけ、物語のポイントとなる簪(かんざし)が落ちる仕掛けもチェックした。
午後2時51分、こしらえを終えた雀右衛門さんは楽屋を出て舞台に向かった。舞台裏で待つこと20分。この間に役に入っていくのだという。
午後3時13分、舞台の上に遊女おかるがいた。
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