―女形一筋に修業を重ねてきた雀右衛門さん。お姫さま役のほかにも、「俊寛」の千鳥、「梶原平三誉石切」の梢などの娘役、「熊谷陣屋」の相模、「傾城反魂香」のおとくなどの女房役、「仮名手本忠臣蔵」の遊女おかるや「源氏店」のお富、「毛谷村」のお園など幅広く演じている。
父はよく、気持ちがなくてはいけないということを言っていました。役の性根というものを理解して、そこに気持ちを込める。歌舞伎といえども人間としての喜怒哀楽は変わらないのだから、気持ちを豊かに、強く持たないと、役の気持ちをお客さまに伝えることができない、と。男が女を演じることには無理がある。無理を克服していくには、体の使い方や殺し方を身に付け、所作をよりきれいにしなくてはいけない。心と形。この二つを大切にしたいと思います。
8~9月の地方巡業で襲名披露をした「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」の遊女おかるは、1984年に国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で初めて演じて以来、いろんな方とさせていただきました。自分は器用な方ではないので、何回も務めさせていただくと、少しは「らしく」見えるようになってくるのかな。
歌舞伎のお芝居は大概の場合、立役が最後を持っていくものですが、おかるは、女形でも最後までいろんな心情を表現できる役の一つ。時代物の歌舞伎らしさの中の心情的なリアリティーを大切に、それが自然とできるようになればと思います。
そのうち、「加賀見山旧錦絵」の尾上や「伽羅先代萩」の政岡(どちらも女形の大役とされる)のようなお役ができるようになればいいですね。
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