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大名跡を襲名して 女形・五代目中村雀右衛門

三姫への挑戦

―新雀右衛門さんは、上品で愛らしい風情に姫役がよく似合い、今回の襲名披露で「三姫(さんひめ)」と呼ばれるお姫さま役の大役に挑んだ。歌舞伎座で、大坂夏の陣を題材にした「鎌倉三代記」の時姫と、戦国時代を背景にした「金閣寺」の雪姫、博多座では武田信玄と上杉謙信の確執を元にした「本朝廿四孝」の八重垣姫。いずれも父の当たり役であった。

 三姫は、他のお姫さま役と比べて姿も非常に華やかで、それぞれに物語の中で根幹を成している。多くの方がいらっしゃらないとできない舞台であるという意味で、三姫と言われるゆえんかなと思います。

 時姫はお姫さまの中のお姫さま。舞台では恋人の三浦之助に対してかいがいしくするけれど、それが娘にならずに、お姫さまでやるということが難しい。僕はせっかちなところがあるので、もっとゆっくりやっていいんだよと(中村)魁春のお兄さまにアドバイスを受けました。

 雪姫は縛られて不自由な姿でいろいろと表現しなくてはならないのが難しい。八重垣姫は三姫の中でも最初に名前が挙がる役で、お姫さまらしさと娘の思いを一心に表現しなくてはいけません。これからも務めさせていただく機会があれば、心情や形を修正しながら回を重ね、深めていきたいと思います。

―襲名披露はこの後も京都・先斗町歌舞練場での吉例顔見世興行(11月30日~12月25日)、香川・旧金毘羅大芝居(金丸座)での「四国こんぴら歌舞伎大芝居」(2017年4月8~23日)などで続く。京都の顔見世では「仮名手本忠臣蔵 道行旅路の嫁入」「廓文章」「京鹿子娘道成寺」と舞踊劇が並んだ。

 舞踊は父が大切にしていたものですから、教えてくれたことを少しでも自分の体を通して表現できれば。父と「二人道成寺」を務めたことがあり、一つ一つの形や間を精いっぱい思い出しながら務めたいと思います。

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