まさか、本当にこの日が来るとは―。2016年のプロ野球セ・リーグは広島カープが25年ぶり7度目の優勝を遂げた。05年から07年までカープ担当記者を務めた筆者の率直な思いが、冒頭の一文だ。
筆者が担当していた3シーズンの主な出来事を挙げてみる。
05年(6位) 最多勝投手(黒田博樹)と本塁打王(新井貴浩)がいながら最下位というプロ野球初の事態に。
06年(4位) この年就任したマーティー・ブラウン監督が一塁ベースを投げ、退場処分に。
07年(5位) 黒田と新井がフリーエージェント(FA)でチームを去る。
こんな具合だ。低迷期のカープ番記者だった筆者が、25年ぶりの優勝について当時の取材メモと思い出を頼りに、あくまでもつれづれに分析。三つの要因を考えた。(時事ドットコム編集部 舟木隆典)
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今季のメンバーには、特に打線に生きのいい若手が多かった。交流戦で本塁打を連発し、「神ってる」と話題になった鈴木誠也、球界一の二塁守備とパンチ力のある打撃の菊池涼介、走攻守そろった丸佳浩、1番打者に定着し、遊撃守備も安定している田中広輔らだ。投手陣も若手の層が厚くなった。前田健太の穴を埋めた野村祐輔、ストッパーに定着した中崎翔太、中継ぎで重要な役割を果たした一岡竜司と大瀬良大地。
野村らを除けば、アマ時代から「プロ注目」と騒がれた選手は誰もいない。皆、カープで鍛えられ、育った選手たちだ。カープはよく「育成球団」と言われる。他の11球団と違って親会社がなく、資金力で劣り、FA市場での獲得競争では勝てない。生命線になるのは、ドラフトで選手の素質を見抜き、入団後にしっかりと育てることだ。
筆者が担当していた当時も、主力のほとんどはカープで育った選手たちだった。野手は嶋重宣や東出輝裕、栗原健太ら、投手陣には河内貴哉、大竹寛らがいた。黒田、新井にしても高校・大学時代から騒がれていた選手では決してない。ただ、育成には時間がかかり、個々の成長の度合い、タイミングがそろうとは限らない。そこが「育成球団」の難しさと言える。
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