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東日本から熊本へ 災害対応、女性の参画がカギ

直後から女性専用スペース

 人間は学習する生き物だ。もちろん同じ失敗を繰り返すこともあるが、過去の経験・教訓を生かし、着実に進歩することができる。熊本地震では、被災した女性への配慮という点において、避難所運営などに著しい進歩が見られた。一方で、まだこうした視点が一般に浸透しているとはいえず、さらに被災地での性暴力・性被害の懸念も付きまとう。発生から3カ月半が過ぎ、生活再建・復興へとフェーズが移る中で、女性の視点から改めて災害への対応を考える。(時事通信社編集委員・三浦直美)

 本震翌日の4月17日。避難所となった益城町総合体育館の敷地に、70人収容できる大型テント「バルーンシェルター」が2基設置された。NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町)によるもので、数日後に個別のテントに移行するまでの間、1基を女性用、1基をペット連れ用の避難所として運用。「プライバシーの問題があり、女性の専用スペースが必要と判断した」と同NPO関係者は語る。

 こうした必要性は東日本大震災後、広く認識されるようになった。東日本大震災では、生理用品など女性用の生活必需品が不足したり、授乳室や着替えの場所がなかったりといった問題が多発。これを踏まえて内閣府が2013年5月に策定した「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」には、避難所の開設当初から授乳室、更衣室を設けることや、管理責任者に男女両方を配置することなどが明記された。

 しかし、熊本はもともと地震が少ないと見られてきた地域。備えが十分ではない中で突如襲った災害に、最初から万全の体制を期待するのは無理がある。

 熊本県助産師会の坂梨京子会長らは地震発生後、哺乳瓶消毒キット、粉ミルク、お尻拭きなどを熊本市内で調達し、被害の大きかった益城町に駆け付けた。避難所と化したホテルには授乳室がなく、施設管理者と相談し、かろうじて空いていた部屋を女性専用スペースにしてもらった。

 「みんな混乱していた。避難所の運営は初めてで、何をどうしたらいいか分からなかったと思う」と坂梨さん。ポイントを書いたチラシを持って「女性に配慮した運営を」とお願いして回っても、「しなきゃいけない?」「男女平等でしょ」という反応もあったと振り返る。

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