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ホホジロザメの生態に迫る 海のハンター展より

ジョーズ 日本上陸

 東京・上野の国立科学博物館で、「海のハンター展-恵み豊かな地球の未来-」が7月8日から10月2日まで開催中だ。深海、極域、外洋、浅海の捕食者の標本が、162点も展示されている。目玉は、オスのホホジロザメの液浸(えきしん)標本。3.2メートル、320キロの巨大な成魚が展示されるのは日本では初めて。地球上で最強とされるサメを、直接見られる絶好の機会が訪れた。映画「ジョーズ」のモデルとしても有名なホホジロザメ。展示会に先駆けて行われた内覧会で、篠原現人氏、佐藤圭一氏の両研究者に、その生態について詳しく聞いた。(時事ドットコム編集部 山本典央)

 液浸標本のホホジロザメは、2014年8月に沖縄県本部町近海のはえ縄にかかって死んでいた。地元漁師から、研究資料として沖縄美ら島財団に提供された。国立科学博物館は、財団の協力を得て、ホホジロザメを研究用の標本にした。

 沖縄美ら島財団の総合研究センター動物研究室の佐藤圭一室長は、「来場者の皆さんには、ホホジロザメの鋭い歯をじっくり観察していただきたい。口は、半開きにしました。ホホジロザメは捕食のとき、さらに大きく口を開けます。その際、目を保護するために後ろに反転させて白目にしてしまうからです」と研究者ならではの工夫を語った。

 佐藤氏によれば、標本のホホジロザメは、色や形は捕獲されたときとほぼ同じ状態だが、(ホルマリンの)液浸の期間が長くなると、色が白くなってしまうとのこと。佐藤氏は「捕ったときの新鮮な状態を、『海のハンター展』で楽しんでいただきたい」と、来場者へメッセージを送った。

 国立科学博物館の動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹(魚類)の篠原現人氏は、「3メートル級のホホジロザメとなると、大きすぎて保管する容器がなかった。そのため、沖縄美ら海水族館でも使われている頑丈な水槽を手に入れました。その時点で、ホホジロザメを展示しようと」と標本化の決断理由を述べた。また、「(サメが)お腹の中から腐って、ガスが溜まり、爆発する可能性もあった。そこは挑戦だったが、(メガマウスザメを標本化した実績がある)佐藤さんの経験が役立ちました」。

 篠原氏は佐藤氏と共に進めた、ホホジロザメ標本化の作業内容に触れ、「(最初は)サメのお腹を開き、ホルマリンを浸透させて形を固定しようと思ったが、佐藤さんに止められた。サメは非常に脂が多い。お腹を開けてしまうと、脂が出てしまう。浸かっているホルマリンに脂が浮いている状態で、お客さんに見てもらうわけにはいきません。そこで、佐藤さんの意見を聞いて、太い注射でホルマリンなどを何度も注入して標本にしました」と詳細を語った。

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