東京都西部の立川市、国分寺市から世田谷区にかけて連なる「国分寺崖線」。湧水や小川、緑地などが広がるこの地域は「はけ」と呼ばれ、古くから自然の宝庫として親しまれてきた。ところが、都が3月末に決定した向こう10年以内に優先整備する都市計画道路(都道)が、東京のほぼ真ん中に位置する小金井市のはけと野川を縦断するものだったことから、地元市民を中心に「開発で、わずかに残された武蔵野の自然と文化の『聖地』を破壊する行為だ」と反対の声が上がっている。
一方、都も「災害時の対応やネットワーク形成に必要」と譲らず、対立の構図ができつつある。
◇「武蔵野夫人」の舞台
都市計画道路の整備方針「第4次事業化計画」で選定された路線は全体で315本、距離223キロに及ぶ。このうち、問題となっているのは小金井市中央部を走る連雀通りから東西に新小金井街道に至る約2キロ(「3・4・1号線」、幅16メートル、仮にA道路と記す)と、連雀通りから南北に東八道路に抜ける約830メートル(「3・4・11号線」、幅18メートル、B道路と記す)の2本だ。(地図)
A道路は、「はけ」を斜めに走り、戦後文学を代表する作家大岡昇平(1909~88年)の小説「武蔵野夫人」のモデルとなった自然・文化地区や民家の密集地区を切り裂く形となる。B道路は、都立武蔵野公園で保全地区に指定されている場所で、三鷹方向の野川公園にもつながる都民らの憩いの場となっている。
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