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角田光代さんインタビュー

人が使う言葉「もろくてあいまい」

 刑事裁判に市民が参加する裁判員制度の開始から7年。制度を題材にした小説「坂の途中の家」を執筆した直木賞作家の角田光代さん(49)が取材に応じ、「裁判員が経験を話しにくい雰囲気がある。何とかならないかと思う」と語った。一問一答は次の通り。

 ―テーマに裁判員制度を選んだ理由は。
 裁判が書きたいというよりも、人が使う言葉がいかに、もろくてあいまいかということを書きたかった。その中で、裁判は言葉で進んでいくものなので、裁判を舞台にしようと思った。

 ―言葉がもろくてあいまいとは。
 同じ言葉でも、使う関係性や雰囲気によって意味が変わる。それと、相手としゃべっている時には言葉でコミュニケーションをするしかないが、そこでは言葉だけじゃなくいろいろな要素があるということを書いてみたかった。

 ―題材として児童虐待を選んだのは。
 最初に舞台として裁判というのを決めて、その後に、裁判に関わることになった女性が過度に被告に感情移入するという設定を決めた。子どもが絡んだ方が、より情が分かると考えた。

 ―過度に感情移入する女性を描きたかった理由は。
 過度に感情移入することによって、周りにいる人間の言葉も全部意味が変わると思った。それこそが私の書きたかった「意味の多重性」ということになる。

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