外観上の特徴の中で際立つのは、衛星通信用アンテナを納めた機体前部上方の「こぶ」だ。全長70メートル50センチ、離陸可能な総重量360トン、乗員最大112人。もちろん、核爆発の時に生じ、電子機器を機能不全に陥れる電磁パルスに対する防護措置もばっちり講じられている。
こういう飛行機であるから、内装は無骨だ。同行記者一行は搭乗後、客室ならぬブリーフィングルームに一直線。座席の並びは、横3席・縦3列の島が左右に一つずつで計18席、モニター前の作業台にさらに3席。座席は指定でそれぞれの名札が張られており、足元の広さはエコノミークラスとビジネスクラスの中間といったところ。背もたれは動くが、リクライニング機能は事実上ない。
それでもエコノミー席に慣れた身には快適だ。どすんと手荷物を放り出し座席に体をうずめると、安心して眠くなってくる。雪だったものの離陸も滑らか。しばらくして、長袖のポロシャツにチノパンという空軍兵らしからぬ装いのクルーが機内食を運んできた。
このフライトのメニューは残念ながら失念したが、全体としては、がんばって軍隊がビジネス用の機内食を用意してみました、という印象だということだけ伝えておこう。
米東海岸を離陸後は、大西洋を渡り、英国の南端をかすめて地中海へ。シナイ半島を避けつつエジプト領空を南下し、紅海を抜けアラビア半島からインド洋へ。ワシントンからインド西海岸のゴア州まで、約16時間半の長旅だ。
空中給油は2回。事前に「20分ほど揺れるのでシートベルトを締めてください」とのアナウンスが流れた通り、軽い乱気流に巻き込まれたような揺れを感じた。しかしこのおかげで、16時間以上の無着陸飛行ができるというわけだ。
残念だったのは、普通なら行われるカーター長官の機内での記者懇談がキャンセルになったことだ。「長い飛行でちょっと疲れている」との説明があったが、記者は一様に不満顔。
記者団の付き添い役のビルが「何か埋め合わせをするはずだから。そうじゃなければみんな俺を飛行機から蹴り出すんだろ?」と話すと、AP通信のリサが厳しい表情で「ビルのせいじゃないでしょ」と応じた。
日付が変わった10日正午ごろ、インドに到着。気温38度。むわっと湿気の多い大気と真っ青な空に迎えられ、確かにアジアにやって来たと実感した。
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