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米国防長官、印比・中東歴訪同行記1 出発編

「終末の日」の飛行機

 同行記者団の集合場所は、アンドルーズ基地のゴルフ場の駐車場。ここで何くれと記者団の面倒を見てくれることになる国防長官室報道部のビル・アーバン海軍中佐と落ち合い、基地内に誘導してもらう。

 移動方法は、いかにも車社会の米国らしい。おのおの自家用車で集合場所までやって来て、そのまま中佐の車を先頭に車列を組んで基地内のターミナルまで進むのだ。私の場合、あいにく米国の運転免許証の有効期限が切れていたので、記者団のリーダー格である米AP通信の国防総省担当リサ(仮名)のホンダ車に同乗させてもらった。

 国防長官専用機に乗る前の手続きは何か? 実は何もない。同行取材の場合、地方空港に似たつくりのターミナルに入れば、手荷物検査もチェックインもなし。そもそも記者団のパスポートも国防総省側が持ち運び、着いた国での入国手続きも代行してくれる。そうでないと、VIP待遇で移動する長官と行動を共にできないからだ。

 というわけで、預け入れ荷物に名札を付けてカウンター前に置いた後はラウンジに入り、優雅にコーヒーをすする。ピーター・クック報道官やデービッド・シアー国防次官補(アジア・太平洋担当)を含む国防総省高官も、同じラウンジで同僚たちと歓談していた。総勢40人程度。

 1時間ほどで、ラウンジのすぐ外に横付けされたバスに乗り込み、駐機場の専用機のタラップの下へ。これを上れば、いよいよ出発だ。

   ◇ ◇ ◇

 最初の訪問地であるインド編に入る前に、米国防長官が外遊に利用する専用機「E4Bナイトウオッチ」について紹介しておこう。

 「専用機」と書いたばかりで恐縮だが、実はこの機体、「国家空中作戦センター(NAOC)」と呼ばれる米空軍機。空軍によれば、NAOCは「国家非常事態ないし地上の指揮統制施設が破壊された場合に、米軍を指揮したり、非常時の戦争命令を遂行したりする高度な生存性を備えた指揮統制・通信センターとなる。

 平たく言えば、核戦争が起きた際、国家・軍指導者が安全な空から戦争指揮を執るための通称「ドゥームズデイ・エアプレーン(終末の日の飛行機)」と呼ばれる物々しい機体である。従って大統領や軍制服組トップの統合参謀本部議長の利用も想定されており、厳密には長官専用機ではない。

 ジャンボジェットの愛称で知られるボーイング社の747―200型旅客機を物騒な仕様に改装したもので、機首部分に長官ら飛行機の「主」の執務室や会議室、その後方に「ブリーフィングルーム」、さらに後ろにデスクとモニターがずらりと並ぶ「作戦要員作業区画」が配置されている。

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