4月9日朝、ワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地。大粒の雪の中に、白地に水色の横一線、さらに「UNITED STATES OF AMERICA」の文字が書かれた四発エンジンの飛行機がかすんで見えた。気温は4度。でも16時間半後には、この米国防長官専用機のタラップを降りて40度近い熱いアスファルトを踏むはずだ―。
時事通信ワシントン特派員である私、北井邦亮は同月9~21日、カーター国防長官によるインド、フィリピン、アラブ首長国連邦、イラク、サウジアラビア歴訪に同行する機会を得た。これからご披露するのは、生まれも育ちも教育も全て日本という「超ドメスティック(国内)人間」が、偶然にも「国防長官ご一行様」に紛れ込んで見聞きした同行取材記。世界を股に掛けて迷惑をまき散らすのか、それとも「国際派記者」に脱皮するのか。日本の恥とののしらず、どうかお気軽にお読みいただきたい。
「カーター長官のアジア・中東歴訪の同行記者枠に空きができたので、貴兄に提供したい」と国防総省から電子メールで打診があったのは、出発3週間半ほど前のことだ。真相は、最初に誘いを受けた他の某日本メディアが旅程の長さにへきえきして辞退し、急きょ私にお鉢が回ってきたというもの。「それは光栄である」と返答したはいいが、そういった経緯なので何しろ話が急だった。
訪問に必要なビザは、インド、イラク、サウジアラビアの3枚。国防総省側が多くを代行してくれるとはいえ、取得にはぎりぎりのタイミングだ。国防総省からオファーが来たその日の夕方には、本社の出張承認を待たずに最初の訪問地インドのビザ申請に着手。何とか全ての書類仕事をこなし、早くもいささか疲れて迎えた出発の朝の天気が、なぜか季節外れの大雪だったというてんまつだ。
これからいろいろと同行取材ならではの体験をするのだが、今回は「非日常」への第一歩、専用機にたどり着くまでを振り返ってみよう。
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