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米国防長官、印比・中東歴訪同行記4 UAE・イラク編

バグダッドで負傷?

 片手からぶら下げた防弾ベストは何キロあるのだろう? 右膝の痛みは続いており、踏ん張りが利かない。

 イラクの連邦議会議事堂や政府庁舎、在外公館などが集まる首都バグダッドの旧米軍管轄区域、通称「グリーンゾーン」。防護壁に囲まれた安全地帯の中で、私は片足をやや引きずりながらバンを降り、先を急いでいた。ヘリコプターはローター音を響かせ、空港に向かうわれわれを待ち構えている-。

 と、シリアスな書き出しをしてみたものの、真実は全く緊迫していたわけではないので、ご安心を。事の次第は後ほど明らかにしよう。

 同行記者団を含むカーター米国防長官一行はフィリピン近海で空母「ジョン・C・ステニス」を視察した翌日、「ドゥームズデイ・プレーン」E4Bナイトウオッチでアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに向かった。

 インドフィリピン訪問では、大国となり自己主張を強める中国の動きを踏まえ、アジア太平洋地域の秩序をいかに維持していくかがテーマだった。これからの中東歴訪では、既に崩壊気味の地域秩序の再構築に向け、各国と対話を重ねることが主な目的になる。

 協議の最大の狙いは、米欧や日本の価値観に真っ向から挑戦し、イラクとシリアを中心に「カリフ制国家」を築こうともくろむ過激派組織「イスラム国」(IS)を打倒する軍事作戦の加速だ。

 オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と宣言しても、米国は秩序の維持だけでなく、その回復を主導する役割も担わざるを得ない。文字通り長官が地球を巡る旅を行ったのも、こうした現実があるからだ。

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