30度近い気温であるはずなのに、汗が出ない。常に向かい風に吹かれているためだ。
戦闘攻撃機FA18スーパーホーネットの主翼のフラップが上下する。ヘッドセット付きのヘルメットをかぶっているのに、ごう音が一段と高まるのが分かる。拡散したジェットエンジンの排気の一部が顔をなで、熱いなと感じた瞬間、機体はカタパルトに引っ張られて勢い良く甲板から飛び出した。
だめだな、こりゃ-。米空母「ジョン・C・ステニス」艦上。空母に乗るのは2014年以来2度目だったが、相変わらず発進する艦載機を写真に納めるのは難しい。
メディアが米国防当局者のアジア行きに際し注目するのは、南シナ海への進出を強める中国や挑発を続ける北朝鮮にどう対処するのかという点だ。カーター国防長官のインド、フィリピン歴訪も、中国の台頭に対応するアジア太平洋地域の「安全保障ネットワーク」をつくり上げることが目的だった。
ただ、インド訪問では、「中国問題」というより、全般的な米印の安全保障協力の強化が直接の焦点になった。長官はインドとの間で補給など後方支援での協力について定めた覚書を結ぶ方針で基本合意し、空母の設計を含む兵器開発でも連携を深めていく姿勢を確認。中国は「ジ・エレファント・イン・ザ・ルーム」(部屋の中の象=明らかに誰もが気付いているが触れようとしない話題)だったのである。
フィリピンでは、そうはいかない。何と言っても中国と南シナ海の領有権問題をめぐりやり合っている当事者であり、米軍は中国の動きをにらみフィリピンへの巡回駐留を拡大する予定だ。長官も中国を強く意識して行動することになる-。こう予想して長官を追っ掛けてたどり着いた先が、南シナ海を航行するステニスだったというわけだ。
新着
会員限定