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米国防長官、印比・中東歴訪同行記2 インド編

「イージーターゲット」

 出発から16時間半、E4Bナイトウオッチが降り立ったのは、インド西海岸ゴア州にあるハンザ海軍航空基地。同国海軍最大規模の航空拠点だ。長時間のフライトにもかかわらず、体調は悪くない。滑走路に反射する強烈な太陽光が、蛍光灯の暗さに慣れた目にひたすらまぶしい。足取り軽くタラップを降りたこの時は、旅のしょっぱなに自分が早速失態を犯すことになろうとは考えてもいなかった。

   ◇   ◇   ◇   【同行記1 出発編】はこちら

 カーター国防長官を含め、米政府要人が国外を訪れ車で移動する場合、必ず十数台の「モーターケード」(車列)を組む。

 先導は受け入れ国の警察車両、続いて要人に常にピタリと寄り添う警備要員の車両、車列中央付近に長官の車、お付きのシビリアン(国防総省の文民職員)の車、続いて同行記者団の乗ったバン、最後尾は再び警察車両。信号も止め、要所要所で現地警察官が警戒に立つ。まさに大名行列だ。

 ところが、ハンザ基地から最寄りの米系ホテル「パークハイアット・ゴア」に向かう途中、踏切で車列が分断されるという珍事が起きた。長官の車両が走り抜けたかどうかは分からなかったが、少なくとも記者団のバンを含め5台以上が10分ほど足止め。場所が場所なら「イージーターゲット(格好の攻撃対象)」である。

 ホテル到着は午後2時すぎ。チェックインは国防総省の支援班が済ませており、長官報道部のビルから部屋のカードキーを受け取ってコテージの自室へ。手荷物を置いて1時間ほど休み、すぐ隣のコテージの一室に設けられた「荷物部屋」から機内預かりのスーツケースを引き取る。

 この仕組みはなかなか効率的だ。同行記者団を含む米代表団一行の機内預かり荷物は、飛行場からまとめて宿泊先ホテルの一室へ届けられ、各自好きな時間に取りに行く。移動する場合は、前日夜や当日の午前中に荷物部屋に自分の荷物を置いておけば、ナイトウオッチまで運んでくれる手はずだ。ただし、この決まりを守らないと荷物が置いてきぼりを食う危険もある。

 自室で休憩後、ゴアが地元のパリカル印国防相に連れられてヒンズー教の寺院とキリスト教の教会の「視察」に赴く長官に同行し、車列でホテルを出る。

 この間、米側から寺院や教会の由緒に関する公式な説明はなし。周りの誰一人として、どういう場所なのか説明できない。果ては「16時間飛行機に缶詰めになった末にここにいると思うと、やれやれだな」との声すら聞こえてくる。

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