職場に子どもを連れてくるなんて。これが多くの日本人の一般的な感覚ではないだろうか。アグネス・チャンさんの子連れ出勤をめぐる「アグネス論争」も今は昔。日本社会はそこから何も変わっていないようだが、深刻な保育所不足などを背景に、今また「子連れ出勤」が新たな働き方として注目され始めている。(時事通信社編集局 三浦直美)
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体験型ギフトの企画・販売を手掛ける「ソウ・エクスペリエンス」社(東京都目黒区)のオフィス。スタッフらがパソコンに向かって作業しているブロックからふと目を移すと、入り口近くの席で小さな女の子がiPadで遊んでいる。言われなければ気付かないくらい自然な光景だ。「いつもならあと1~2人いるんですが、きょうはたまたま1人だけです」と、子連れ出勤プロジェクトを担当する関口昌弘さん(34)。自身も二歳児の父で、常時ではないが、たまに子どもを連れてくる。
この会社が子連れ出勤を導入したのは2013年。考え抜いた結果というよりは、いわば必要に迫られての成り行きだった。当時10人程度の小さな会社。ある女性スタッフが妊娠し、抜けられるのは痛手だった。一方、産休中の本人も働く意思があり、「じゃあ、子どもを連れてくれば?」という話に。駄目だったらやめよう、と始めてみたところ、ゼロ歳児で意外と手がかからず、大丈夫だったという。
14年夏、子連れ出勤可で求人を出すと、すぐに反応があった。やはり、まず2か月間の試行からスタート。「子ども、親、会社…。どこで『駄目』がくるか分からないので」。ある子どもは、やんちゃ盛りの2歳。あちこち動き回ったりしたが、周りのスタッフも次第に慣れた。これまでに延べ12人ほどの子連れスタッフを迎え入れ、駄目だったケースはないそうだ。「家庭でも徐々に慣れていく。それと同じです」。
困ったことといえば、子どもがパソコンの電源を抜いたり書類を破ったりしたことがあった。しかし、注意して分からせたり、手の届かない所に置いたりするなどの工夫で対処できた。また、あるとき取引先から電話中に「子どもの声がする」と言われた。大事な話なのに外で電話していると思われたようで、事情を話したら納得してくれたそうだ。
「小さな企業で、社内保育所はつくれないが人手は欲しい。一方で待機児童問題がある。保育所に預けられない人、早く職場復帰したい人…。待機児童問題の抜本的な解決にはならなくても、復帰のタイミングの選択肢が増えるのはいいことだと思う」と関口さんは語る。
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