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震災孤児、遺児に寄り添う

3つのレインボーハウス

 「震災は時間的には過去になるけれど、影響は形を変え、変化しながら続く。周囲の決めつけない態度こそが、当事者を支える」。東北地方の沿岸部を中心に津波で甚大な被害を出した東日本大震災から、3月11日で5年。厚生労働省によると、両親をともに失った震災孤児(当時18歳未満)は244人、1人親となった震災遺児は1538人(同)に上る(2015年9月現在)。東北地方で孤児・遺児に寄り添ってきたあしなが育英会の西田正弘・東北事務所長(55)に、今の課題と私たちにできることを聞いた。(時事通信社編集局 天野佳代子)

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 「死ぬんだったら誰と一緒がいい?」「私はお母さんがいいな」「私も。でももういないんだよね」

 「学校で家族何人って聞かれたら何て答える?」「死んだ家族も入れる?」

 西田さんは震災発生2カ月後から、宮城県石巻市内の体育館などで震災孤児や遺児、養育者が語り合う場を運営してきた。15年からは、被災地の仙台、石巻、陸前高田(岩手県)に建設されたあしなが育英会が運営する孤児らの交流施設「レインボーハウス」で、訪れる子どもたちを見守っている。

 子どもたちは遊びの途中でふと、冒頭に記したような会話をする。西田さんを含む職員9人と研修を受けて参加するボランティアスタッフは、そんな時そっと聞いている。15年の1年間だけで、3つのレインボーハウスを利用した人は延べ1000人に上る。これまでに子どもの話を聴いたボランティアは約120人だ。

 レインボーハウスには、サンドバッグをたたいてストレスを発散したり、1人になったりできるさまざまな部屋がある。楽しそうに走り回る子もいるが、「はしゃいでいる子が悲しんでいないわけではない。辛い時ほど笑顔を見せる子もいる」。子どもたちが自分の気持ちを話せるよう心掛けるが、話すよう求めはしないという。

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