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程永華駐日大使インタビュー

中国封じ込めは「冷戦思考」

  中国の程永華駐日大使は時事通信とのインタビューで、南シナ海で進めている岩礁埋め立てなどに日本や米国が反対していることについて、「中国を封じ込めようという狙いに見える。そういう考え方自体が冷戦思考だ」と不快感を示した。インタビューは2015年6月17日、中国大使公邸で行われた。

インタビュー要旨は次の通り。

―日中関係改善の流れは定着したか。戦略的互恵関係の強化のため、日本に求めることは何か。

 日中双方が、信頼を再構築し、互いの友好、協力を続けていく段階であると理解している。2008年の日中共同声明は、平和的発展を支持し合い、互いに脅威と見なさないとの規定がある。日本側は言葉のみならず、政策面や実際の行動で示してほしい。

―海空連絡メカニズムの運用開始時期の見通しは。

 近い将来とみている。そんなに遠くはないと思う。中身はかなり煮詰まっていると聞いている。

―安倍晋三首相が今夏に公表する「70年談話」で、どの点に注目しているか。

 第2次大戦の間、日本の対中国侵略戦争やアジアの隣国に対する責任について、どう示すか、一番関心がある。かつての加害者の立場から、かつての被害者に対し、どういう戦争責任や反省の誠意を示すか、これが非常に肝心だ。これを曖昧にしたり、否認したりする言い方だと、余計に被害者の気持ちを傷つけ、さらに加害する意味にもなる。

―日本は戦後70年間、平和国家として歩んできたと考えるか。

 周恩来首相は当時、日本軍国主義の起こした侵略戦争によって、中国国民に多大な災難をもたらしたと同時に、日本国民も深くその害を受けたと言っている。しかし、日本国内の一部には、かつての戦争を美化したり、戦争責任を否認したりする言動もある。そういう言動を見ると、日本政府の歴史を直視する姿勢は本当かうそかとの疑念が出てくる。日本は戦後、平和憲法に基づき、「軍事よりも経済を優先」の政策を実施し、平和的発展の道を歩んできた。08年の日中共同声明で、中国も認めている。

―安全保障法制整備や日米防衛協力の指針(ガイドライン)再改定をどうみているか。

 日本に対する理解において、戦後の歴史的な転換期にあるとみている。中国の主権や安全の利益を侵害するかどうか、「警戒的関心」がある。どこかと組んで中国をけん制し、封じ込めようとの狙いに見える。それには反対だ。

―先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で採択された首脳宣言では、南シナ海などでの中国の活動に懸念が示された。

 中国を議論する場としてふさわしくない。基本的事実を顧みず、中国を非難することに反対だ。南沙(英語名スプラトリー)諸島での建設は、中国の主権の範囲内のことであり、各国が国際法に基づき有する航行と飛行の安全と自由に何ら影響を与えず、非難されるものではない。
 中国は、領土主権と海洋権益を断固守ると同時に、直接関係のある当事国と交渉・協議を通じて、関連の紛争を解決することに、引き続き尽力するつもりだ。
 南沙諸島は中国固有の領土だ。この点は疑う余地がない。中国は早くも漢の時代から南沙諸島を発見し、最初にこれらの島しょを命名し、開発利用してきた。第2次大戦の終結後、日本から南沙諸島を取り戻した。1970年代初頭まで、南沙諸島にはいかなる係争も存在しなかった。南沙諸島の一部島しょは、70年代以降に、一部の国に不法占拠され、初めて「係争島しょ」となった。また、それらの国は長期にわたり不法占拠している南沙の島しょで、土木工事を行っている。ごく少数の国は、この点については何も言わず、中国が自国の領土で、正常な活動を行っていることについて、とやかく言うのは、完全に二重基準だ。
 (これらの動きは)中国を封じ込めようという狙いに見える。そういう考え方自体が冷戦思考だ。中国を仮想敵国と見立てて、日本の政策目的を実現しようと見える。(安倍内閣による)こういう政策は間違いだ。

―今後、中国は国際社会でどのような役割を果たしていくのか。

 中国は国際社会とともに発展していくのが基本姿勢だ。シルクロード経済圏(一帯一路)構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)という具体的なイニシアチブを出した。その中で、中国は日本の役割を重要視している。アジアの地域協力を邪魔することなく、一緒にアジアの発展や繁栄に協力しようという姿勢だ。

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