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全仏オープン、錦織いざ勝負

錦織に「候補2番手」の声も

 男子テニスの錦織圭が、24日に開幕する全仏オープンで上位進出を狙う。錦織を優勝候補の一角に挙げる声もあり、最大の目標である四大大会制覇へ、力が試される大会になる。

 その瞬間、彼は激しい雄たけびを上げた。試合が終わったわけでも、優勝が決まったわけでもないのに、である。彼とは、現在世界ランキング1位、今季絶好調のノバク・ジョコビッチ(セルビア)だ。5月15日に行われたイタリア国際準々決勝の錦織戦。セットカウント1-1で迎えた最終第3セットの第4ゲーム、錦織のサービスゲームをブレークして優位に立ったとき、世界1位の激しいガッツポーズと雄たけびが出た。試合の流れはこれを境に一気にジョコビッチへと傾き、錦織は最終セットを1-6で失って敗れた。

 ジョコビッチの雄たけびは決して珍しいことではない。ただ、あのブレークが試合の流れを大きく左右するものであることを王者は知っていたということだろう。逆に言えば、第2セットを3-6で失い、ジョコビッチも追い込まれていた。錦織はそれほど、世界1位を本気にさせていた。

 現在の錦織の男子テニス界でのポジションを、このシーンは明確に物語るものだろう。全仏を前にした「クレーコート」のシーズンに入り、バルセロナ国際で大会2連覇を果たし、強豪が顔をそろえたマドリード・オープンでは4強、イタリア国際では8強。大会5連覇中のラファエル・ナダル(スペイン)が調子を落としていることもあり、今回の全仏は大きなチャンスだ。1990年代に全仏での2勝を含め、四大大会で通算4勝を挙げたジム・クーリエ(米国)はロイター通信に対し、「私が考える(全仏の)優勝候補の2番手は錦織だ。なぜなら、彼が現状、クレーコートで2番目のプレーヤーだと思うからだ」と答えている。

 四大大会の中で、最も波乱が多いのが全仏オープンだ。赤土のコートは他の3大会とはかなり条件が異なり、苦手にする名手も多い。四大大会14勝のピート・サンプラスや同8勝のジミー・コナーズ、同7勝のジョン・マッケンロー(いずれも米国)らの名選手が全仏には勝てなかった。四大会最多の17勝を挙げている現役のロジャー・フェデラー(スイス)にしても、クレーを得意とするナダルという強力なライバルが同時代にいたこともあり、全仏では1勝にとどまっている。

 ハードコート、芝コートに比べてボールがよく弾み、勢いが鈍る。このため、ハードヒッターやビッグサーバーのアドバンテージが小さくなる。伝統的に土のコートで育ってきたスペイン、イタリア、フランスなどの南欧勢やスウェーデン勢、ブラジル、アルゼンチンなどの南米勢が浮上することが多い。全仏で3勝を挙げたグスタボ・クエルテン(ブラジル)は他の3大会では8強が最高だったし、全仏2勝のセルジ・ブルゲラ(スペイン)も他3大会になると、16強が最高と「並の好選手」にとどまった。

 ハードコート育ちの米国勢でも、全仏オープンを得意にするのは、比較的小柄で粘りのあるプレーやストローク戦を身上とする選手が多い。女子で最多の全仏7勝を挙げたクリス・エバートや、今や錦織のコーチとして知られるマイケル・チャン(1989年に17歳で制覇)らがその代表格だろう。ランキング上位者であっても、苦手にする選手が多い大会、クレーになると、ランキング以上に躍進する選手が生まれる大会が全仏なのだ。

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