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さよなら「北斗星」

トンネルを抜けると…

 目が覚めると午前5時前。青森駅通過は夢の中だったようで、間もなく北斗星は青函トンネルに入る。危うく見逃すところだった…。身支度を整え、ロビー車に行ってみた。同じことを考える人は多いようで、5~6人が外を眺めていた。

 トンネルに入ると、窓ガラスが一瞬で結露し、白くなった。毎分20トンをくみ上げるほど水がしみ出すそうなので、トンネル内の空気は相当に湿っているのだろう。

 結露が収まってくると、隣の線路にレールが3本見えた。北海道新幹線が部分開業する2016年以降、北斗星よりも一回り大きい新幹線用車両が、青函トンネルを走る。3本目のレールはこのためのものだ。

「青函トンネルを通る瞬間を見たかったので、ずっと起きてました」。ロビーにいた会社員中島ゆきこさんがはにかんだ。スキー旅行の途中だといい、「ちょっとした触れ合いとか、目的地までの過程を楽しむ、旅の醍醐味(だいごみ)がありますよね」。

 話を聞いている途中、「うわー」と中島さんが嘆息を漏らした。つられて窓の外を見ると、日の出直前の大地が広がっていた。白んだ空と黒い大地のシルエットは、さながら影絵のよう。なるほど、旅の醍醐味かと納得した。

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