女優の吉永小百合さんが主演する「ふしぎな岬の物語」(成島出監督)が公開中だ。女優生活55年を数える吉永さんが初めて企画に名を連ね、共演陣には吉永さん演じるヒロインにひそかな思いを抱くおい役の阿部寛さんをはじめ、笑福亭鶴瓶さん、竹内結子さんら豪華なキャストが集結。岬に立つ一軒の喫茶店に集う人々の人間模様が描かれている。
「東日本大震災の後に自分が感じたさまざまな思いを生かしたかった」と言う吉永さんに、映画の魅力や女優として心掛けていることなどについてお話をうかがった。(文化特信部編集委員 小菅昭彦)
―原作は森沢明夫さんの小説。吉永さんがほれ込んで、映画にしたいと思われたとか。
震災後にテレビで、亡くなった方が自分の前に現れたという遺族の証言を集めたドキュメンタリー番組を放送していたのを見ました。それは心の中にということなんでしょうけど、亡くなった方は一様に「これからもちゃんと生きていってほしい」とのメッセージを残されたというんです。
その番組を見て、命を受け継ぐことの大事さをすごく感じて、そんな思いを大上段ではなく、震災を絡めない形で映画にできないかと考えました。成島監督と映画になりそうな題材を探している最中に、映画賞の授賞式でお会いした森沢さんが「この作品を読んでください」と原作本を渡してくださり、これなら素敵で温かい物語が出来ると思いました。
作品選びに関わったことから、脚本作りにも最初から参加させていただき、周囲の皆さんの要請もあって、初めてプロデュース業も兼ねることになりました。
私たちは年月がたつと、いろいろな出来事をどんどん忘れがちになる。でも、今もたくさんの人がふるさとを離れざるを得ない状況にあります。そんな人たちの気持ちに寄り添えるような映画にしたいと思いました。
日本全体を見ても、最近はこれまで考えられなかったような犯罪が起きています。そんな時代だからこそ、もっと心を重ね合わせることの大事さを知ってほしいと思った。皆がパソコンばかりに向かって、機械だけにしか会話をしなくなっていくのは怖いことだと思います。
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