作曲家の佐村河内守さんが別人に代作させていた問題で、桐朋学園大非常勤講師の新垣隆さんが2014年2月6日、記者会見を開き、18年間にわたって佐村河内さんのゴーストライターを務めてきたことを認めた。会見では2人の出会い、「作品」の創作過程、「影武者」としての思いを語った新垣さん。両耳が聞こえず、「現代のベートーベン」と呼ばれて注目を集めた佐村河内さんに対しては、「耳が聞こえないと感じたことは一度もない」「譜面を書けない」などと指摘した。
1時間半に及んだ会見で新垣さんが語った「真相」の中から、問題の核心部分の発言要旨をテーマごとに紹介したい。(構成・時事ドットコム編集部)
新垣さんは会見の冒頭、事前に用意された下記のコメントを読み上げた。
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私は、佐村河内守さんと出会った日から18年にわたり、彼の代わりに曲を書き続けてきました。
佐村河内さんが世間を欺いて曲を発表していることを知りながら、指示されるがまま、曲を書き続けた私は、佐村河内さんの「共犯者」です。障害をお持ちになった方々、また、彼の言葉を信じて曲を聴いてくださった非常に多くの方々、見事な演奏をしてくださった演奏家の皆様、本当に申し訳ありませんでした。
当初は、軽い気持ちで曲を書くことを引き受けていました。彼を通じて、私の書いた曲が世の中に受け入れられ、うれしかった気持ちがあったことは否めません。
しかし、彼がどんどん世間に知られるようになるにつれて、この関係が世の中に明らかになってしまうのではないか、と不安を抱くようになりました。同時に、「これ以上、自分の大好きな音楽で世間を欺き続けたくない」という気持ちが、私の中で大きくなっていきました。
私は、何度かにわたり、彼に対して「こんなことはもうやめよう」と言いました。しかし、彼は聞き入れてくれませんでした。また、「あなたが曲を書かないと、私は自殺する」と言いました。
そのような中、フィギュアスケートの高橋大輔選手がソチオリンピックで滑る際に、私の作曲した「ソナチネ」を選ばれたことを知りました。このままでは、日本を代表してオリンピックで活躍する高橋選手までもが、「彼と私のウソを強化する材料」になってしまうと思いました。
しかし、同時に、この事実を知った高橋選手が受けるショックのことを考えると、いま公表するべきかどうか、とても迷いました。
ただ、このまま私が何も言わず、高橋選手がオリンピックで演技された後に事実が発覚した場合、高橋選手はやはり非常に戸惑うのではないでしょうか。さらには、「偽りの曲で演技したではないか」と、世界中から日本に非難が殺到するかもしれません。
いろいろと考えた結果、高橋選手には、この事実を知った上でオリンピックで堂々と戦っていただきたいと思い、本日このような会見を開かせていただきました。
高橋選手、そして音楽作品を聴いてくださった皆様には、本当に申し訳ないことをしたと思っています。深くお詫び申し上げます。
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