團十郎さんに初めて1対1でお話を伺ったのは2007年夏。東京・国立劇場の稽古場だった。毎年8月に行われる国立劇場の歌舞伎俳優研修の修了生らの合同公演で「勧進帳」が初めて上演されることになり、稽古も取材した。普段は脇役として舞台を支えているお弟子さんたちを細かく丁寧に指導されていて、「勧進帳」をきちんと守り伝えていくことがいかに大事であるかを実感した。記者の拙い質問にも一つ一つ丁寧に答えてもらい、本当にありがたかった。
その後も、さまざまな節目に取材させていただいた。初めて「勧進帳」の弁慶を演じた時の稽古で、お父さんに台本を書き写して自分の台本を作れと言われた話など、少年時代の懐かしい思い出を、あの大きな目を見開いて、いたずらっぽく笑いながら懐かしそうに話されるのが印象的だった。
12年に最後にお会いした時は、これからの歌舞伎と日本文化について、いつにも増して熱っぽく語っていた。託されたその言葉を、これからも大事にしていきたいと思う。
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