――歌舞伎座が建て替え中の3年間は東京以外での歌舞伎興行が増える一方、人間国宝の中村富十郎さん、中村芝翫さん、中村雀右衛門さんが相次いで亡くなった。歌舞伎界は世代交代の時期を迎えている。
先輩方がいらっしゃらなくなった3年という月日のうつろいを感じます。これからは、ずいぶん違う雰囲気の歌舞伎が出てくるのではないかな。我々の世代もおかげさまでいい年頃になり、せがれたちも30半ばから40。考えてみれば、そういう時代に移ろうとしているのかなと思います。
古典芸能は年配者がいい芸を見せる世界である一方で、若いピチピチした人の舞台を見て、「あら、きれい」と感じていただける世界でなければ立ち行かなくなる。ですから、これから頑張ろうという人たちの門を開いてあげて、道を妨げないようにしなければいけないと思っています。
【市川團十郎さん略歴】 1946年8月6日生まれ、東京都出身。53年10月、歌舞伎座で市川夏雄を名乗って初舞台を踏み、58年5月に六代目市川新之助、69年11月に十代目市川海老蔵、85年4月に十二代目市川團十郎を襲名。
スケールの大きな芸風で、当たり役に「勧進帳」の弁慶、「助六由縁江戸桜」の助六のほか、「仮名手本忠臣蔵」の大星由良之助、「熊谷陣屋」の熊谷直実、「若き日の信長」の信長などがある。「歌舞伎十八番」の継承に力を注ぎ、80年に「外郎売」、2009年には「象引」を復活上演した。
04年5月、長男の十一代目市川海老蔵襲名披露興行中に白血病を発症。壮絶な闘病生活を乗り越えて、舞台に復帰した。
07年紫綬褒章。著書に「歌舞伎十八番」「團十郎の歌舞伎案内」「團十郎復活」など。
12年12月、京都・南座の顔見世興行を途中から休演し、2013年2月3日死去。
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