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市川團十郎さんからの伝言

芸の継承

――1965年11月、襲名のわずか3年半後に父の十一代目が亡くなり、19歳で後ろ盾を失った團十郎さん。叔父の二代目尾上松緑らに教えを請いながら家の芸を身に付け、69年に十代目市川海老蔵、85年に十二代目市川團十郎を襲名した。

 大きな役で父から直接習ったのは「勧進帳」の弁慶と、「寺子屋」の松王丸だけです。何か役をやるたびにおじさん方のところを回って教えていただき、自分の目に残っている父と重ねながら演じました。

 今、海老蔵には私が教えることもありますが、いろんな方から教わるのが大事だと思っています。結構いろんな方のところへ行って教えていただいているはずですが、ここのところ、心境が変わったのか、今度のお正月(2013年の東京・浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」)にやる「勧進帳」は、もう一回さらい直しということで、12月に稽古を付けることになっています。海老蔵も30半ば。自分というものがあるでしょうから、精神的なことを話すと思います。

――市川團十郎家のお家芸は、初代團十郎が創始した豪快で力強い荒事。「童(わらべ)の心で、純真無垢(むく)な心でやれ」と言い伝えられてきた荒事の精神は、現代にも通じるはずだという。

 荒事の根本精神は勧善懲悪。弱きを助け、悪をくじくと言う精神ですね。今の日本は強きにおもねて、弱きをいじめる。我々の先祖がやってきたように、弱い人を助け、悪を懲らしめることは勇気が要ることですけども、荒事の世界ではそれができている。そういう舞台を務めたいなと思います。

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